自民党広報のツイートに物申す~みんなこのインチキに気付いてくれ~
自民党広報がこんなツイートをしている。
【データで見る!アベノミクス5年間の実績】
— 自民党広報 (@jimin_koho) 2017年10月10日
名目GDPはこの5年間で50兆円増加!過去最高の水準です。#アベノミクス の加速で #景気回復 #デフレ脱却 を実現します!多くの方に知っていただきたいのでぜひシェアにご協力ください!#この国を守り抜く #自民党 #衆院選 #拡散希望 pic.twitter.com/T5iLVTGm2z
これに対し,経済評論家の池田信夫氏がこんなツッコミを入れている。
これはGDPを計算する「SNA」を新基準に変更したために名目ベースで31兆円嵩上げされたんだよ。恥ずかしいから、自民党はこのツイートを削除したほうがいい。 https://t.co/aTttQNMrNq
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年10月10日
SNA新基準対応に伴い名目GDPが大きくかさ上げされたのは事実だ。
しかし,それ「だけ」で31兆円かさ上げされた,との認識は誤りである。
専門家の池田信夫氏ですら気付いていないおぞましい事実がある。
これはアベノミクスに批判的な他の専門家達も気付いていない。
今度の選挙は自民党が大勝しそうな勢いだが,これを全国民が知ったら果たして自民党に投票するだろうか。
結論から言うと,「最新の国際的GDP算出基準への対応」を隠れ蓑にし,GDPが改ざんされている可能性が非常に高い。私はほぼ確信に至っている。
2016年12月8日,内閣府は新しい算出基準によるGDPを公表した。これに伴い,1994年度以降のGDPが全て改定された。
改定の概要は非常に単純化すると下記のとおり。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/sankou/pdf/point20161222.pdf
1.実質GDPの基準年を平成17年から平成23年に変更
2.算出基準を1993SNAから2008SNAに変更
3.その他もろもろ変更
4.1994年まで遡って全部改定
「その他もろもろ変更」が最も重要なので覚えておいていただきたい。
この部分は,2008SNAとは全く関係無い。
以下,改定前の数値を「平成17年基準」,改定後の数値を「平成23年基準」と呼ぶ。
改定によって大きく名目GDPがかさ上げされた。改定前後を比較すると下記のとおり。
平成17年基準(青線)では,1997年度の521.3兆円が過去最大値であった。2015年度の500.6兆円と比較すると約20兆円もの差がある。
ところが,平成23年基準(オレンジ)では,1997年度がピークであることに変わりはないが,その額は533.1兆円。
他方,直近の2015年度の数字がなんと532.2兆円になっており,1997年度とほとんど同じ額になっているのである。
20兆円も差があったのに,改定によってその差が埋まってしまったということだ。
なぜそのようになるのか。下記のグラフを見ていただきたい。これは改定によるかさ上げ額を抜粋したものである。
アベノミクス開始後の2013年度以降の額が突出しているのが分かるだろう。
2015年度なんて31.6兆円もかさ上げされている。これはアベノミクス開始直前である2012年度の約1.5倍である。
これをかさ上げ率にしてみると下記のとおり。
アベノミクス開始以降だけ5%を超える高いかさ上げ率を記録しているのが分かる。
問題は,このかさ上げの内訳である。以下,内閣府公表資料から抜粋する。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/sankou/pdf/point20161222.pdf
かさ上げ額の内訳を大きく2つに分けると,
1.2008SNA対応によるもの
2.「その他」
である。
2008SNAというのはGDPの国際的な算出基準である。以前は1993SNAを使用していた。この算出基準の変更によって研究開発費等がGDPに加えられるので,名目GDPが大きくかさ上げされる。
まずは2008SNA対応によるかさ上げ額から見てみる。
これをかさ上げ率にすると下記のとおり。
2015年度が1位,2014年度が2位,2013年度が3位。アベノミクス開始以降の年度が上位をすべて占めている。
だが,最も重要なのは「その他」のかさ上げ額だ。以下のグラフを見ていただきたい。
アベノミクス開始以降の年度が異常にかさ上げされているのが一目瞭然である。アベノミクスの開始前とは全く比較にならない。
「その他」のかさ上げ額がプラスになること自体,過去22年度でたった6回しかない。そのうちの半分をアベノミクス以降が占めている。
さらに,アベノミクス前だと,「その他」の最高かさ上げ額は2005年度の0.7兆円。他方,アベノミクス開始以後だと下記のとおり。
・2013年度4兆円
・2014年度5.3兆円
・2015年度7.5兆円
桁が違い過ぎる。
そして,特に1990年代を見ていただきたい。かさ上げどころか,かさ「下げ」されている。全部マイナスである。1994年度なんてマイナス7.8兆円。
そして,かつて史上最高額を記録していた1997年度に注目である。「その他」で5兆円もマイナスになっている。
2015年度の名目GDPは「2008SNA対応」で24.1兆円,「その他」で7.5兆円もかさ上げされ,合計で実に31.6兆円のかさ上げ。
他方,改定前に史上最高額だった1997年度は,「2008SNA対応」で16.9兆円,「その他」でマイナス5兆円,合計で11.9兆円のかさ上げ。
同じ基準で改定したはずなのに,かさ上げ額に20兆円も差があるのだ。
その原因は,2008SNA対応部分でのかさ上げにも大きく差がある上,「その他」でさらに差を付けられたからである。
「その他」の部分だけ見ると,2015年度と1997年度には実に12.5兆円もの差が付いている。
この結果,改定後の2015年度名目GDPは,史上最高額である1997年度にほとんど追いついた。
そして・・・2016年度の名目GDPは1997年度を追い抜き,史上最高の537.5兆円を記録した。
もう一度言う。「その他」は2008SNAと全く関係無い。
この全く関係無い部分でかさ上げ額の不自然な調整がされ,2016年度名目GDPが「史上最高」を記録するという現象が起きている。
「その他」の内訳について,内閣府に問い合わせてみたが「内訳は無い」との回答であった。
じゃあどうやってこの空前絶後のかさ上げ額を算出したんだよ。
私はこの回答をもって,GDP改ざんを確信した。
さて,ここでもう1回さきほどの自民党広報ツイッターを見てみよう。
【データで見る!アベノミクス5年間の実績】
— 自民党広報 (@jimin_koho) 2017年10月10日
名目GDPはこの5年間で50兆円増加!過去最高の水準です。#アベノミクス の加速で #景気回復 #デフレ脱却 を実現します!多くの方に知っていただきたいのでぜひシェアにご協力ください!#この国を守り抜く #自民党 #衆院選 #拡散希望 pic.twitter.com/T5iLVTGm2z
「過去最高」と自慢している。
どう思うよ。俺は怒りで頭がおかしくなりそうだぜ。
国民の知らないところで凄まじいインチキがされている。
なぜこのようなことをするのか?
アベノミクスが大失敗に終わっているからである。うまくいっていればこのようなことをする必要は無い。
アベノミクスがどのような失敗をしたか,そして,どれほどおそろしい副作用が待っているか,それは拙著「アベノミクスによろしく」を読んでいただければ分かる。
GDP改ざん疑惑についてもより詳細に分析している。
下記リンクは書籍のダイジェストだが,これだけでもだいたい理解できるはず。
この本では,「株価が上がった」「雇用が改善した」等,アベノミクスの成果とされているものまで全て客観的データをもって否定している。
この本を書かなければ,私の認識は「どれだけ自民党がひどくても,少なくとも経済は民主党時代よりマシ」という状態のままだったであろう。
今は違う。
アベノミクスは史上最低最悪の経済政策であり,我が国最大の国難である。
大失敗に終わっただけでなく,超巨大な副作用を孕んでいる。
民主党時代の方が圧倒的にマシであった。比較にすらならない。
この記事に対して文句を言いたくなる輩もいるだろうが,まずは拙著を読んでから文句を言っていただきたい。
==追記==
本当に内閣府に問い合わせたのか疑問という輩がいたので,内閣府から来た回答メールをここにそのまま載せる。
これは拙著の担当編集本川氏の問い合わせに対して,内閣府のI氏から回答されたものである。イニシャル加工と赤字部分は筆者。
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集英社インターナショナル 本川様
平素より大変お世話になっております。
内閣府経済社会総合研究所のIと申します。
昨日お問い合わせのあった件について連絡が遅くなり、申し訳ありません。
当方で確認しましたところ、「その他」は平成23年基準改定のうち、「2008SNA対応」を除いた部分になりますが、
産業連関表の取り込み、定義・概念・分類の変更、その他の推計方法の変更(建設コモ法の見直し)等々が含まれ、
様々な要素があり、どの項目にどれほど影響しているか等の内訳はございません。
ですが、以下の資料でそれぞれ、2008SNA対応とそれ以外で詳しく解説がありますので、
ご参考までに送付させていただきます。
プレアナウンス
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/seibi/2008sna/pdf/20160915_2008sna.pdf
↓さらに詳しく
利用上の注意
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/sankou/pdf/tyui27.pdf
↓さらに詳しく
季刊
http://www.esri.go.jp/jp/archive/snaq/snaq161/snaq161_c.pdf
------------
もちろんリンク先の資料も私は見ている。
「その他」についての説明はされているが,「具体的に」「どの項目が」「いくら」という内訳は無い。
ここでもう一度かさ上げの内訳表を見ていただきたい。
見ての通り,2008SNA対応部分については詳細な内訳がある。
しかし「その他」については,まったく内訳がない。ここで変な操作がされているなんて,よく見なければ気づかない。
この事実だけは本当に国民に知ってもらいたい。是非拡散を。
===追記2===
ブコメを見ると「内訳が書いてある資料がある」との指摘がある。
これはデマ。
ちゃんと読めば分かる。
前述のとおり,内閣府の資料には「その他」の説明は書いてある。
しかし,それだけ。
肝心の「具体的な数字」が書いていない。
私はその点を問題にしている。
2008SNA対応部分は,説明がある上に,「数字」で内訳がはっきり書かれている。しかし,「その他」には「数字の内訳」が出てこない。
だからブラックボックスになっているのである。
==追記3==
アベノミクス以降のかさ上げ額が極端に増えているのは,研究開発費が増えたからだ,との指摘を目にした。
ここは重大な点だから強調しておく。
「研究・開発(R&D)の資本化」は,「2008SNA対応部分」だ。
「その他」とは全く関係無い。
だから問題にしてるのだよ私は。
なお,この異常なかさ上げ現象を,私は「カサアゲノミクス」と呼んでいる。
#カサアゲノミクス
書籍版「アベノミクスによろしく」発売
以前このブログに書いた「アベノミクスによろしく」が元になった書籍が10月6日に発売されることになった。
単にブログの内容を書籍にしたものではない。ブログ版は前後編合わせても1万2000文字程度に過ぎなかったが,書籍版は8万文字ぐらい。大幅に加筆・修正している。
本書の特徴はそのデータ量。グラフと表が合わせて90近く出てくる。これほどデータを駆使した書籍は他に無いのではないかと思う。
本の内容を漫画と共にダイジェストで紹介する。
第1章 アベノミクスとは何か
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
この章ではアベノミクスが一体何なのかについて説明している。
アベノミクスはほぼ異次元の金融緩和に尽きると言ってよい。
それがどれくらい異次元のものであるかは,マネタリーベースの対名目GDP比をアメリカと比較すると分かりやすい。
このグラフを見たとき,日銀のやっていることがどれほど異常なことなのか,理解できるはずである。アメリカの金融緩和など比較にならない。
私は最初にこのグラフを見たとき,恐怖を感じた。
いくら異次元と言っても,ここまで異次元だとは思っていなかった。
第2章 マネーストックは増えたか
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
マネタリーベースというのは,「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」の合計値のことである。ざっくり言えば,日銀が民間銀行に供給するお金と考えれば良い。日銀は民間銀行から国債を買いまくり,代わりにお金を渡している。これにより,民間銀行が日銀に持っている「日銀当座預金」の残高は異常なペースで増えている。
他方,マネーストックというのは,実際に世の中に出回っているお金のことである。民間銀行からの貸し出し等を通じて,世の中にお金が行き渡らなければ,マネーストックは増えない。マネーストックが増えなければ物価も上がらない。
では,そのマネーストックはどうなったのかについて分析しているのがこの章である。
特に,マネタリーベースとマネーストックを指数化して比較しているグラフが必見である。
私はこのグラフを見て爆笑してしまった。あまりのダダ滑りっぷりに。
これを見るだけでもアベノミクスは失敗だったと言い切ってよいような,衝撃的なグラフである。
思わず「全然そうなってませんけどォォォォォォ!」と叫びたくなるだろう。
第3章 国内実質消費は戦後最悪の下落率を記録
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
民間最終消費支出というのは,国内民間消費の総合計額のことである。
その実質値は,2014年度,リーマンショック時を超える下落率を記録した。
さらに驚くべきは,2015年度の実質民間最終消費支出はその2014年度をも下回った。
2年度連続で実質民間最終消費支出が下がるのは,政府が公開しているデータで見る限り戦後初である。
(なお,暦年データでみると,リーマンショック時も2年連続で実質民間最終消費支出が下がる現象は起きている。書籍では漫画の中のセリフが「2年連続」になっており,「度」が抜けている。これは間違いである。ゲラではそうなっていなかったのだが。重版になれはこの部分は直す予定である。)
そして,2014年度も2015年度も,アベノミクス開始前である2012年度の数値を下回った。
これほど消費が冷え込んだことを,一体どれだけの国民が知っているだろうか。
これを言うと「すべて増税のせい」と言う輩がいるが,誤りである。
2013年度~2015年度までの間に,消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く)は5%上昇した。
そして,日銀の試算によると,3%の増税による物価上昇は2%である。
犯人はアベノミクスである。異次元の金融緩和で無理やり円安にしたため,輸入物価が上がった。それが大きく影響した。
増税も,円安も「物価が上がる」という効果は同じである。
そして,給料が変わらないのに物価が上がれば消費が冷えるのは当たり前。
2013年度~2015年度の間に,名目賃金は0.5ポイントしか上がっていない(暦年だとわずか0.1ポイント)。だから,物価を考慮した実質賃金は4.3ポイントも落ちた。少なくとも過去22年度で最悪である。それが消費の落ち込みに直結した。
実質賃金下落について,「非正規が増えたから平均値が下がった」という最もらしいウソを信じる人が後を絶たない。しかし,よく考えていただきたい。それが本当だったら名目賃金も下がらなければならない。しかし,下がっていない。
実質賃金が下がった原因は,増税とアベノミクスで物価が上がったからである。そして,アベノミクスの影響の方が大きい。騙されてはいけない。
GDPの6割を占める民間最終消費支出がこれほど落ち込んだのだから,GDPはもちろん悲惨なことになった。国内経済はすさまじく停滞した。
ここで,アベノミクス失敗を象徴する現象を5つにまとめると下記のとおりである。
1.2014年度の実質民間最終消費支出はリーマンショック時を超える下落率を記録した。
2.戦後初の「2年度連続で実質民間最終消費支出が下がる」という現象が起きた。
3.2015年度の実質民間最終消費支出は,アベノミクス開始前(2012年度)を下回った(消費がアベノミクス前より冷えた)。
4.2015年度の実質GDPは2013年度を下回った(3年分の成長率が1年分の成長率を下回った。)
5.暦年実質GDPにおいて,同じ3年間で比較した場合,アベノミクスは民主党時代の約3分の1しか実質GDPを伸ばすことができなかった。
正に史上空前の大失敗を犯したアベノミクス。
アベノミクスがもたらしたのは「官製スタグフレーション」である。実質GDPを見れば明らかに経済が停滞したのだが,物価だけが上がってしまった。
しかし,信じられない出来事が,国民の全く知らないところで起きていた。それが次の第4章で明らかになる。
第4章 GDPかさ上げ疑惑
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
2016年12月8日,GDPは改定された。過去22年も遡って。
この事実をほとんどの国民が知らないだろう。
そして,知っている人は,この改定を「2008SNA対応」のためのものであると理解しているだろう。
2008SNAというのは,最新の国際的GDP算出基準である。この基準に従うと,新たに研究開発費等がGDPに加わるので,GDPが大きくかさ上げされる。
だが,この改定に際し,「その他」の名目で,異常なかさ上げがされたことに誰も気づいていない。
「その他」は2008SNAとまったく関係ない。このまったく関係ない部分において,アベノミクス以降だけが,異常にかさ上げされているのである。
この記事はあくまでダイジェストなのでグラフは本を買って見てほしいのだが,「その他」のかさ上げ額を示したグラフだけは特別に公開する。
アベノミクス以降だけ異常にかさ上げされてるのが一目瞭然である。
アベノミクス以前はむしろほとんどマイナスになっている。特に90年代は大きくマイナスになっている。1994年度と2015年度のかさ上げ額の差は実に15.3兆円。
同じ基準で改定したにもかかわらず,なぜこれほどかさ上げ幅に異常な差が出るのか。
一体この内訳はどうなっているのか。
担当編集者から,この「その他」の内訳について,GDPを作成した内閣府に問い合わせをしたところ,「内訳は無い」との回答であった。
そうであるならば,どうやってこのかさ上げ額を算出したのか。
内閣府からの回答により,私の中で「故意に数字を操作したのではないか」という疑惑がほぼ確信に変わった。
なお,「その他」だけでなく,2008SNA対応によるかさ上げ額もアベノミクス以降が1位~3位を占めている。
その結果,改定によるアベノミクス以降の数字はとんでもないことになっている。
私はこの現象を「カサアゲノミクス」と名付ける。
カサアゲノミクスによって,前述した「アベノミクス失敗を象徴する5つの現象」は一体どうなったのか,そして,カサアゲノミクスが何を目標にしているのか・・・それは本を読んで確かめていただきたい。衝撃的な事実がそこにある。
これは日本の借金返済能力をごまかす行為である。企業でいうなら粉飾決算。
森友・加計問題は「政策論争とは関係ない」という言い訳が通用するかもしれない。しかし,このカサアゲノミクス問題にその言い訳は通用しない。
アベノミクスという,安倍政権を支えてきた経済政策に対する重大疑惑である。
野党が本気で追及すれば,世界を揺るがす大問題に発展するかもしれない。
第5章 アベノミクスの成果を鵜呑みにしてはいけない
1.雇用改善とアベノミクスは無関係
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
アベノミクスの成果として最も強調されているのは,雇用の改善かもしれない。
しかし,それもデータを分析すると,アベノミクスと関係無いことが分かる。
雇用改善は,生産年齢人口の減少,医療・福祉分野の需要増大,雇用構造の変化(非正規雇用の増大)によるもので,民主党時代から続いていた傾向である。
特に,増えた雇用の内訳をみると,アベノミクスと関係ないことがよく分かると思う。高齢人口の増大で,医療・福祉分野の雇用は凄まじく伸びており,これが雇用改善に大きく影響している。
私の知る限り,雇用改善をアベノミクスの成果とする論者の中で,「増えた雇用の内訳」に言及している者はいない。内訳を見れば雇用改善がアベノミクスと関係無いのがよく分かるのだが。わざとやっているなら悪質,わざとでないなら分析が浅すぎる。
2.株価は日銀と年金でつり上げているだけ
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
株価が上がってはいるが,それは日銀(量的金融緩和,ETF爆買い)と年金(GPIF)によるものである。
実体経済は全く反映されていない。官製相場である。
公的資金の投入を止めれば,間違いなく株価は大暴落するだろう。
3.アベノミクスの恩恵を受けたはずの製造業でも実質賃金低下
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
アベノミクスにおいて最大の恩恵を受けたのは製造業である。
円安による為替効果で,莫大な利益を得た。
だが,その製造業の労働者ですら,実質賃金は下がっている。
物価が急激に上がりすぎたからである。
他の業種と比べれば,製造業の名目賃金は伸びているのだが,それ以上に物価が上がったため,結局実質賃金が下がってしまった。
最大の恩恵を受けた製造業ですら実質賃金が下がったのだから,一般庶民はアベノミクスによる恩恵を全く受けていない。
ただ単に,実質賃金を下げられただけ。エンゲル係数も急上昇。
ただひたすらに,生活が苦しくなっただけ。
その事実に,気付かなければならない。
4.賃上げ2%を達成できたのは少数
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
「3年連続賃上げ2%達成」というのは,前回の参議院選挙の際に流れていた自民党のテレビCMで強調されていたものである。
しかし,統計的に見ると,賃上げ2%を達成できたのは全労働者のわずか5%に過ぎない。
日本の民間企業の労働組合組織率は約16%しかない。しかも,労働組合が組織されているのは大きな企業に偏っている。したがって「物価が上がったから賃上げしろ」という圧力が使用者にかかりにくい。それが日本の賃金が上がらない一つの要因になっている。
さっきも言ったが,ほとんどの労働者は,アベノミクスによって,ただ単純に実質賃金を下げられただけである。
第6章 第3の矢は労働者を過労死させる
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
3本の矢からなるアベノミクスであるが,第3の矢で何を用意しているかと言えば,残業代ゼロ法案である。
しつこくしつこく「時間では無く成果で評価する制度」などと報道されているが,まっ赤な嘘である。成果給を義務付ける条文が法案に入っていないのだから。
ただ単に残業代をゼロにされるだけである。
この法案については,私が所属するブラック企業対策被害弁護団のウェブサイトに「ブラック法案によろしく」というコンテンツを作ってあるので,是非見ていただきたい。
http://black-taisaku-bengodan.jp/burahou/
「テキストで読むのなんてめんどくせーよ」という方には動画バージョンも用意してある。
なお,この動画に出てくる声は全て私である。1人で20役近く演じ分けている。
つい最近,より端的に残業代ゼロ法案の対象者が分かる内容にした「ブラック法案によろしく2」も作った。こちらもついでに見ていただきたい。
http://black-taisaku-bengodan.jp/burahou-2/
残業代ゼロ法案は単なる金の問題ではない。命にかかわる問題である。
今回の衆議院解散で形式的には廃案になったが,必ず再提出されるであろう。
なお,残業代ゼロ法案は,残業時間上限規制を骨抜きにする内容である。したがって,残業代ゼロ法案を通してしまったら「働き方改革」など絶対に実現できない。
これ以上長時間労働の犠牲者を増やしてはならない。
残業代ゼロ法案についても是非今回の衆議院選挙で争点にしていただきたい。
労働者にとっては最も身近で影響のある問題なのだから。
第7章 アベノミクスの超特大副作用
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
この章では,日本の財政状況と,国債発行の仕組みについて解説した上で,金融緩和を止めるとどうなるのかを予想している。
当然である。借換債も含めると,日銀が儲け度外視で毎年約120兆円も国債を爆買いしているのだから。
では,それを止めるとどうなるのか・・・
逆に,止めないでずっと続けたらどうなるのか・・・
この章に書いてあるのはあくまで私の予想である。そして,外れてほしい予想でもある。あまりにも悲惨だから。
アベノミクス最大の問題点は,巨大すぎる副作用である。
第8章 それでも,絶望してはいけない
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
この章では総まとめを書いている。
アベノミクスは,壮大な現実逃避である。事実上の財政ファイナンスという禁じ手を使い,財政再建から逃げ続けている。
こんな現実逃避を続ける国家の通貨が,信用を保てるだろうか。私はそうは思わない。
このままではいつか円が暴落する時がくると思っている。それがいつになるかは分からない。
現実逃避が長引くほど,逃げられなくなった時のダメージは大きくなる。
だから,痛みを覚悟してでも,一刻も早くこの現実逃避を止めなければならない。
安倍総理は今回の解散を「国難突破解散」と名付けたが,我が国最大の国難はアベノミクスの副作用である。「円の存立危機事態」が引き起こされている。
円が暴落すれば社会保障も国防もままならない。
この本がつきつけるのは厳しい現実である。
見たくもない,信じたくもない現実である。
だが,目をそらさないでほしい。一人でも多くの方にこの現実を知っていただきたい。
このダイジェストを読んで文句を言いたくなる人もいるだろうが,まずは本を読んでから文句を言っていただきたい。この記事はあくまでダイジェストに過ぎないのだから。
ところで,本に出てくる「モノシリン」というのはコイツである。
どうも担当編集に「ふざけたキャラ」と思われたらしく,本には載せてもらえなかった。ま,別にいいのだが。
そして,「太郎」というのはコイツである。
エクセルで適当に作った,適当なキャラである。私自身がわりと毒舌なので,太郎君も毒舌キャラなのだが,担当編集にはその部分をカットされ,牙を抜かれたおとなしい男子になっている。
この1匹と1人が色々な「仕組み」についてトークするのがこのブログのメインコンテンツである。全然閲覧数は稼いでいないのだが。
これは本当に各記事3分で読み終わる短さである。
目次~このブログについて~ - モノシリンの3分でまとめるモノシリ話
この本は221ページしかない短い本なのでサクッと読み終わると思う。新書だからコンパクトだし,値段も税抜740円とお買い得である。
経済の知識が全くない人でもわかる内容である。用語解説もかなり詳しくした。
1人でも多くの人に読んでほしい。
サンウルブズ,ブルースに圧勝
今日はサンウルブズ対ブルース戦を見に行った。
正直に言うと,勝利はあまり期待していなかった。
相手はあのブリティッシュ&アイリッシュライオンズを破ったチームなのだ。
かたや,我らがサンウルブズは今季1勝。南アフリカでは2連続で大敗。
上り調子の強豪対落ち目の弱小。
普通に考えて,勝てるはずがない。絶対にない。
しかし,頭の片隅に「ひょっとしてひょっとしてくれないかな~」という想いはあった。
これは私だけではないと思う。
ほんのわずかな期待の根拠は「暑いこと」と「チーフスとは接戦を演じたこと」である。
今までサンウルブズは,暑いときに接戦を演じてきたように思う。特にシンガポールでの試合。
「サンウルブズは暑いと強い」。これがなんとなく頭にあった。
そして,チーフスに1トライ差で惜敗したこと。
チーフスとブルースだったら,ブルースの方がちょっと弱い。
だから,ツボにはまればフルースともいい試合ができるのではないか,と思ったのである。
とはいえ・・・いざ試合が始まってみると,ぽんぽんと2トライを取られる。
それぞれスローフォワードとノックオンがスルーされて取られたトライに見えたのだが・・・。特にスローフォワードについては私の席からよく見えたので完全にアウトだったと思う。審判がブルースをえこひいきしているように思えた。
なんて悪いトライの取られ方だ・・・
やっぱり今日もボコボコにされるのか。見てた人はみんなそう思ったに違いない。
さらに田村のパスがインターセプトされてトライ。
この時,もうトライを取られるのは間違いないのに全力で追いかけるブリッツの姿に感動した。
「負けはしたがこのブリッツの姿勢は忘れない」こんなセリフを吐く自分を想像した。
しかし,今日のサンウルブズは一味違う。2トライ返して前半は14-21。1トライ差。
「前半はいい勝負で楽しめた。しかしやはり後半が・・・・」
こんなセリフを吐く自分を想像した。私と同じ思いがよぎった人は少なくないだろう。
この時,だれが想像しただろうか。
この試合のブルースの得点がこの21点で終わることを。
狼達がブルースをこれ以降完封することを。
後半が始まった。
あのジェローム・カイノと,レネ・レンジャーが入ってきた。。。
超強そうだ。こんな怪物たちを止められるのか?
いつフルボッコモードに入るだろうかと思っていたのだが,いつになってもそうならない。
今日のサンウルブズのディフェンスは良かった。
まさに狼であった。獲物に喰らいつくかのごとく,獰猛にタックルする。連携もばっちりだ。
そしてブルースはぽこぽこミスをした。ボールがよくこぼれる。
カイノはハイタックルでシンビンになってるし。
明らかに暑そうだ。
「こんな日にラグビーやるなんてクレージーだぜ」
そんな風に思っていたに違いない。確かにラグビー日和ではない。
だが,暑いのはこちらも一緒だ。むしろサンウルブズは先週まで(冬の)南アフリカにいたメンバーも多数いたのだから,ブルースの方が気候に慣れていたのじゃないか。先に来日してホンダと練習試合していたぐらいなのだから。
しかし,ブルースはもうぐったりしているように見えた。
他方,我らが狼たちはピンピンしていた。とにかくよく動く。
セットプレーも安定していた。ゴール前スクラムを押し込んだときはスクラムトライかと思った(結局パスがつながらずトライまでいけなかったが。あのまま押せばいいのにと思ったのは私だけか。)。今日のスクラムは一度も負けていなかったように見えた。
ラインアウトもほぼ全部確保していたと思う。2メートル級の選手がいないのによく頑張っていた。
そして・・・今まで頻出していた「そこで蹴るの?」と思うようなキックが減っていた。
同点になったあたりからは完全に押せ押せムードだ。
BKも参加した巨大モールでのトライはあの南アフリカ戦を彷彿させた。
それでも,「いや,いつか逆転されるんじゃないか」と思っていた。
勝利を確信したのは残り5分くらいの時か。
まさかあんなにトライラッシュになるとは思わなかった。
がっくりうなだれるブルースの選手を見たときはもはやかわいそうになったぐらいだ。本当に暑くてつらそうだった。
だが,暑くてつらいのはこちらも一緒だ。印象に残ったのはラファエレ。ふと彼をみると,はしっこでクラウチングポーズみたいなのを取りながらふくらはぎをストレッチしているのが見えた。
たぶん,足がつったのだと思う。かなり重症のようで,ストレッチをしたあとちょっとヨロヨロしていた。「もう交代させてあげないとヤベーだろ。」と思った。
しかし,それから1分もたたないうちに彼は全力疾走してトライを取っていた。
結局彼はハットトリックを達成した。
すごい執念だ。そして,すごいイケメンだ。もう一回言うけど,すごいイケメンだ。もっと注目されていいと思う。五郎丸よりイケメンだぞ。
そして試合終了。48-21。
何も事情を知らない人にこのスコアだけを見せたら「そーか。やっぱりダブルスコアで負けたんだね」っていうだろう。
「いや,勝ったのサンウルブズだから」って言っても信じてもらえないんじゃなかろうか。
それほど信じられない大勝だった。
今日の試合では,フィジカルという土台の部分でサンウルブスが勝っているようにみえた。暑いのはお互い様なのになぜサンウルブズだけあんなにピンピンしているのかは謎である。気持ちの問題だろうか。
ところで,90点以上取られて惨敗した南アフリカのライオンズ戦と今回のメンバーの身長と体重を一覧にすると下記のとおり(※先発のみ)。
■対ライオンズ
NO | 名前 | 身長 | 体重 |
---|---|---|---|
1 | 三上 | 178 | 115 |
2 | 坂手 | 180 | 104 |
3 | 山路 | 180 | 108 |
4 | ワイクス | 197 | 109 |
5 | 谷田部 | 190 | 107 |
6 | 徳永 | 185 | 100 |
7 | 金 | 177 | 93 |
8 | ブリッツ | 193 | 108 |
FW平均 | 185.0 | 105.5 | |
9 | 内田 | 179 | 86 |
10 | 小倉 | 172 | 80 |
11 | 後藤 | 177 | 80 |
12 | カーペンター | 183 | 95 |
13 | 山中 | 188 | 95 |
14 | 中鶴 | 177 | 82 |
15 | 笹倉 | 186 | 92 |
BK平均 | 180.3 | 87.1 | |
全平均 | 182.8 | 96.9 |
■対ブルース
NO | 名前 | 身長 | 体重 |
---|---|---|---|
1 | 山本 | 181 | 118 |
2 | 日野 | 172 | 100 |
3 | 具 | 184 | 122 |
4 | 谷田部 | 190 | 107 |
5 | ヘル | 193 | 115 |
6 | イラウア | 187 | 105 |
7 | 松橋 | 180 | 99 |
8 | ブリッツ | 193 | 108 |
FW平均 | 185.0 | 109.3 | |
9 | 内田 | 179 | 86 |
10 | 田村 | 181 | 91 |
11 | 福岡 | 175 | 83 |
12 | ラファエレ | 186 | 98 |
13 | トゥポウ | 187 | 101 |
14 | 松島 | 178 | 87 |
15 | フィルヨーン | 185 | 90 |
BK平均 | 181.6 | 90.9 | |
全平均 | 183.4 | 100.7 |
フォワード,バックスともに,今回の先発メンバーの方が約4キロほど重い。
そして,ライオンズ戦で先発し,ブルース戦も先発したのは谷田部,ブリッツ,内田の3名のみ。
今回のサンウルブズは,ライオンズ戦とは全くメンバーが違うし,体格も一回り大きいチームだったことが分かる。
ちゃんとメンバーが揃えばいい試合ができる,とは言ってよいと思う。
私はもう来シーズンが楽しみである。