週間新潮さ~ん,カサアゲノミクスも取り上げてよ~
週刊新潮2017年10月19日号には,
【偽装大国 中国もビックリ!政府発表「GDP4%成長」実は「マイナス9.9%」のカラクリ】なる記事が載っている。
私も読んでみたが,要するに季節調整値で怪しい操作をしているようである。
週刊新潮さんはGDPに疑念をもっておられるようだが,是非カサアゲノミクス問題を取り上げて頂きたい。
この記事が広まったおかげでちょいちょいマスコミの方から取材を受けているので早い者勝ちだよ。
最新の国際的GDP算出基準である「2008SNA」対応を隠れ蓑し,全然関係無い「その他」という項目で異常なかさ上げがされていることを指摘した下記の記事は多いにバズッた。とはいえ,所詮5万アクセス程度。
既存メディアが大きく取り上げてくれない限り,ネットだけの拡散力には限界がある。
ここで,リンク先を見るのもめんどくさいと言う方のために駆け足で「カサアゲノミクス」を説明する。
去年の12月にGDPは改定された。表向きは,最新の国際的GDP算出基準である「2008SNA」に対応するため,というのが大きな理由であった。これにより,研究開発費等がGDPに加えられるので,GDPが大きくかさ上げされると事前に報道されていた。
しかし・・・その「2008SNA」と全く関係無い「その他」という項目により,アベノミクス以降だけ異常なかさ上げがされていたのである。それが下記のグラフ。
アベノミクス以降(2013年度以降)だけ昇竜拳みたいに伸びている。
1990年代なんてかさ上げどころが全部かさ「下げ」になってるのに。
この「その他」の部分について,内訳が無いのか内閣府に問い合わせたら「無い」と言われたのである。
なお,変な誤解を振りまこうとする輩がいるので言っておくが,この内訳は「数字の」内訳である。内閣府は「その他」について内容を説明してはいるが,肝心の「数字の内訳」を公表していない。完全にブラックボックスである。
これが世に言う「カサアゲノミクス」であるが,今回は拙著「アベノミクスによろしく」にも載っていない別角度からの分析を試みる。重版になったらこの分析も追加しようかなと思っている。
なお,拙著「アベノミクスによろしく」ダイジェストはこちら
この分析の結論を先に言うと,「改定後の名目民間最終消費支出が,名目家計消費支出指数の傾向と一致しない」ということである。
名目家計消費支出指数は総務省統計局が公表しているものである。各世帯がどれだけ消費にお金を使ったのかを指数化したもの。
統計局ホームページ/家計調査 家計消費指数 結果表(2015年基準)
他方,名目民間最終消費支出はGDP(支出側)の一項目であり,内閣府が公表している。国内の民間消費を全部足したものと考えればよい。
改定前後の名目民間最終消費支出と,名目家計消費支出指数(2015年=100)を重ねてみたのが下記グラフである。
なお,名目家計消費支出指数(2015年=100)は,2002年からの数値しかない。また,暦年(1月~12月)データしかないので,比較対象となる民間最終消費支出も暦年データである。年度(4月~翌年3月)データと混同しないよう注意されたい。
さらに,改定前のデータは2015年までしかないので,検証も2015年までのデータで行う。
改定前の名目民間最終消費支出(青)は,2015年でカクンと落ちている。
名目家計消費支出指数(緑)も,2015年でカクンと落ちている。
が・・・・改定後の名目民間最終消費支出(赤)は,落ちるどころか,微妙に上がっている(グラフだと分かりにくいかもしれないが,約1750億円ほど伸びている)。名目家計消費支出指数の動きと一致していないのである。
また,改定前後の名目民間最終消費支出(赤線と青線)をよく見て頂きたい。2015年だけ,グラフの動きが正反対になっている。
つまり,改定前の名目民間最終消費支出(青)は2015年で「下がって」いるのに,改定後の名目民間最終消費支出は「上がって」いるのである。
このように,改定前後のグラフの動きが正反対になるのは,過去22年で一度しか発生していない現象であり,2015年だけ。
ここで,改定前後の2015年名目民間最終消費支出の差額は,なんと7.8兆円もある。それだけかさ上げされたということだ。
拙著「アベノミクスによろしく」には書いたが,「その他」でかさ上げされた金額と,改定前後の名目民間最終消費支出の差額はほぼ一致している。アベノミクス以降の3年度のみ3年度連続でほぼ一致という抜群の不自然さである。
「その他」のかさ上げ額は年度の数字しか公表されておらず,暦年でどうなっているのか不明であるが,暦年データにおいても傾向は同じであろう。
要するに,「その他」で思いっきりかさ上げされた金額は,ほぼそのままアベノミクスで最も成績の悪かった民間消費に充てられた,ということである。
特に,2015年及び2015年度の民間最終消費支出が酷かったのだが,8兆円近くかさ上げしたので大幅に修正されてしまったのである。
だが,そんなにかさ上げしたら他の統計と当然つじつまが合わなくなる。だから総務省統計局の名目家計消費支出指数の傾向と一致しなかったのである。
ここで,上記のグラフをみてこんないちゃもんをつけてくる輩がいることが予想できる。「名目家計消費支出と名目民間最終消費支出って,元々傾向が完全に一致しているものでもないだろ」と。
確かに,名目家計消費支出指数は2011年までずっと下落傾向であり,名目民間最終消費支出の動きと完全に一致しているわけではない,。
この原因は,世帯数増加により,支出の平均値が下がったためと思われる。
※1995年と2011年にガクンと落ちているのは,地震(阪神大震災,東日本大震災)で正確な世帯数が把握できなかったため。
主に単身世帯が増えた影響で,総世帯数は増え続けてきた。これにより,世帯別の消費の平均値は当然下がっていく。この世帯数増加傾向は2014年まで続き,その後下降に転じた。
したがって,2014年までは「世帯数増加により支出の平均値が下がる」という要素を考慮に入れなければいけない。
そこで,「名目家計消費支出指数」に,「世帯数」をかければ,名目民間最終消費支出とほとんど同じようなグラフになるのではないか,と私は考えた。
それが下記のグラフの緑線である。これに改定前名目民間最終消費支出(青)と,改定後名目民間最終消費支出(赤)を重ねてみた。
予想どおり,緑線は名目民間最終消費支出とほぼ同じ傾向(他方が上がればもう一方も上がり,他方が下がればもう一方も下がる)を示している。
傾向が違っているのは過去14年中2回だけ。まずは2006年。緑線は下がっているが,赤線も青線も上がっている。この齟齬ができる原因は分からない。
(なお,緑線が2011年に思いっきり下がっているのは,さっきも言ったとおり東日本大震災の影響で正確な世帯数の統計がとれなかったためである。)
そして,2015年。緑線はやっぱりガクンと落ちているが,赤線はさっきも指摘したとおり微妙に上昇しており,傾向が一致しない。思いっきりかさ上げし過ぎてつじつまが合わなくなったため,と解釈すべきであろう。
このように,他の統計と一致しないという点も,「カサアゲノミクス」の疑念をさらに深めるものである。
ところで,ついでに国民の消費がどれほど悲惨な目にあっているかということを,名目及び実質家計消費支出指数を見ることによって確かめてみよう。
2013年に増税前の駆け込み需要で伸びた後,支出指数は名目(青)・実質(赤)共に大きく落ち込んでいる。特に実質家計消費支出指数(赤)が悲惨である。
まるでジェットコースターのように見えるので,私はこれを「アベ・コースター」と呼んでいる。2016年までひたすら下降を続けているが,この勢いだと2017年もさらに下がりそうだ。
さっきも言ったが,「総世帯数の増加により,平均値が下がる」という要素を考慮すべきなのは2014年まで。それ以降は逆に世帯数が減っているからである。
つまり,2015年と2016年は純粋に消費支出が減った,と評価すべきである。
そして,消費がこれだけ減っているということは,つまり我々1人1人の生活が苦しくなっているということだ。
なぜこんなことになっているのかは是非拙著を読んで確かめていただきたい。カサアゲノミクスについてもさらに別の角度から分析している。
それにしても・・・こうやって一度思いっきりかさ上げしてしまうと,それ以降もずっとかさ上げし続けるはめになる。なぜなら,本当の数字をそのまま出すともの凄いマイナス成長になってしまうからである。前年が思いっきりかさ上げされているのだから。
つまり,2016年以降のGDPは全然信用できない値になってしまった。週刊新潮に載っていた季節調整値でごまかすというテクニックもそういう状況から生まれた苦肉の策であろう。
もしこの「カサアゲノミクス」問題が国会で追及されれば,モリカケ問題を越える大騒ぎになるだろう。
モリカケは国内問題だし,「政策論争とは関係無い」という言い訳ができる。
しかし,カサアゲノミクスは違う。世界を騙す行為であり,「アベノミクス」という正に安倍政権の根幹を支えてきた政策に対する重大疑惑である。言い逃れができない。
ところで,今日取材していただいたとあるマスコミ関係者の方にこんなことを言われた。
「これほどあからさまなことをやりますかね」と。
私も最初はそう思ったが,今は違う。
「その他」で思いっきりかさ上げするという手法は結果を見れば全然あからさまではなかった。なぜなら私だけしか気付かなかったのだから。
そして,私が気付いたと言っても,マスコミが取り上げなければそこでおしまいである。
全マスコミにスルーされれば,カサアゲノミクスは無かったことにされるのだ。
また,「日本の官僚がそんなことをするのか」と思われるかもしれない。
しかし,少なくとも経産省の繊維統計については,長年にわたって改ざんされていたことが確定している。
東芝,神戸製鋼,経産省,そして内閣府・・・・「KAIZEN」ならぬ「KAIZAN」が日本人の得意芸になってしまったとしたら,本当に悲しいことである。
自民党広報のツイートに物申す~みんなこのインチキに気付いてくれ~
自民党広報がこんなツイートをしている。
【データで見る!アベノミクス5年間の実績】
— 自民党広報 (@jimin_koho) 2017年10月10日
名目GDPはこの5年間で50兆円増加!過去最高の水準です。#アベノミクス の加速で #景気回復 #デフレ脱却 を実現します!多くの方に知っていただきたいのでぜひシェアにご協力ください!#この国を守り抜く #自民党 #衆院選 #拡散希望 pic.twitter.com/T5iLVTGm2z
これに対し,経済評論家の池田信夫氏がこんなツッコミを入れている。
これはGDPを計算する「SNA」を新基準に変更したために名目ベースで31兆円嵩上げされたんだよ。恥ずかしいから、自民党はこのツイートを削除したほうがいい。 https://t.co/aTttQNMrNq
— 池田信夫 (@ikedanob) 2017年10月10日
SNA新基準対応に伴い名目GDPが大きくかさ上げされたのは事実だ。
しかし,それ「だけ」で31兆円かさ上げされた,との認識は誤りである。
専門家の池田信夫氏ですら気付いていないおぞましい事実がある。
これはアベノミクスに批判的な他の専門家達も気付いていない。
今度の選挙は自民党が大勝しそうな勢いだが,これを全国民が知ったら果たして自民党に投票するだろうか。
結論から言うと,「最新の国際的GDP算出基準への対応」を隠れ蓑にし,GDPが改ざんされている可能性が非常に高い。私はほぼ確信に至っている。
2016年12月8日,内閣府は新しい算出基準によるGDPを公表した。これに伴い,1994年度以降のGDPが全て改定された。
改定の概要は非常に単純化すると下記のとおり。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/sankou/pdf/point20161222.pdf
1.実質GDPの基準年を平成17年から平成23年に変更
2.算出基準を1993SNAから2008SNAに変更
3.その他もろもろ変更
4.1994年まで遡って全部改定
「その他もろもろ変更」が最も重要なので覚えておいていただきたい。
この部分は,2008SNAとは全く関係無い。
以下,改定前の数値を「平成17年基準」,改定後の数値を「平成23年基準」と呼ぶ。
改定によって大きく名目GDPがかさ上げされた。改定前後を比較すると下記のとおり。
平成17年基準(青線)では,1997年度の521.3兆円が過去最大値であった。2015年度の500.6兆円と比較すると約20兆円もの差がある。
ところが,平成23年基準(オレンジ)では,1997年度がピークであることに変わりはないが,その額は533.1兆円。
他方,直近の2015年度の数字がなんと532.2兆円になっており,1997年度とほとんど同じ額になっているのである。
20兆円も差があったのに,改定によってその差が埋まってしまったということだ。
なぜそのようになるのか。下記のグラフを見ていただきたい。これは改定によるかさ上げ額を抜粋したものである。
アベノミクス開始後の2013年度以降の額が突出しているのが分かるだろう。
2015年度なんて31.6兆円もかさ上げされている。これはアベノミクス開始直前である2012年度の約1.5倍である。
これをかさ上げ率にしてみると下記のとおり。
アベノミクス開始以降だけ5%を超える高いかさ上げ率を記録しているのが分かる。
問題は,このかさ上げの内訳である。以下,内閣府公表資料から抜粋する。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/sankou/pdf/point20161222.pdf
かさ上げ額の内訳を大きく2つに分けると,
1.2008SNA対応によるもの
2.「その他」
である。
2008SNAというのはGDPの国際的な算出基準である。以前は1993SNAを使用していた。この算出基準の変更によって研究開発費等がGDPに加えられるので,名目GDPが大きくかさ上げされる。
まずは2008SNA対応によるかさ上げ額から見てみる。
これをかさ上げ率にすると下記のとおり。
2015年度が1位,2014年度が2位,2013年度が3位。アベノミクス開始以降の年度が上位をすべて占めている。
だが,最も重要なのは「その他」のかさ上げ額だ。以下のグラフを見ていただきたい。
アベノミクス開始以降の年度が異常にかさ上げされているのが一目瞭然である。アベノミクスの開始前とは全く比較にならない。
「その他」のかさ上げ額がプラスになること自体,過去22年度でたった6回しかない。そのうちの半分をアベノミクス以降が占めている。
さらに,アベノミクス前だと,「その他」の最高かさ上げ額は2005年度の0.7兆円。他方,アベノミクス開始以後だと下記のとおり。
・2013年度4兆円
・2014年度5.3兆円
・2015年度7.5兆円
桁が違い過ぎる。
そして,特に1990年代を見ていただきたい。かさ上げどころか,かさ「下げ」されている。全部マイナスである。1994年度なんてマイナス7.8兆円。
そして,かつて史上最高額を記録していた1997年度に注目である。「その他」で5兆円もマイナスになっている。
2015年度の名目GDPは「2008SNA対応」で24.1兆円,「その他」で7.5兆円もかさ上げされ,合計で実に31.6兆円のかさ上げ。
他方,改定前に史上最高額だった1997年度は,「2008SNA対応」で16.9兆円,「その他」でマイナス5兆円,合計で11.9兆円のかさ上げ。
同じ基準で改定したはずなのに,かさ上げ額に20兆円も差があるのだ。
その原因は,2008SNA対応部分でのかさ上げにも大きく差がある上,「その他」でさらに差を付けられたからである。
「その他」の部分だけ見ると,2015年度と1997年度には実に12.5兆円もの差が付いている。
この結果,改定後の2015年度名目GDPは,史上最高額である1997年度にほとんど追いついた。
そして・・・2016年度の名目GDPは1997年度を追い抜き,史上最高の537.5兆円を記録した。
もう一度言う。「その他」は2008SNAと全く関係無い。
この全く関係無い部分でかさ上げ額の不自然な調整がされ,2016年度名目GDPが「史上最高」を記録するという現象が起きている。
「その他」の内訳について,内閣府に問い合わせてみたが「内訳は無い」との回答であった。
じゃあどうやってこの空前絶後のかさ上げ額を算出したんだよ。
私はこの回答をもって,GDP改ざんを確信した。
さて,ここでもう1回さきほどの自民党広報ツイッターを見てみよう。
【データで見る!アベノミクス5年間の実績】
— 自民党広報 (@jimin_koho) 2017年10月10日
名目GDPはこの5年間で50兆円増加!過去最高の水準です。#アベノミクス の加速で #景気回復 #デフレ脱却 を実現します!多くの方に知っていただきたいのでぜひシェアにご協力ください!#この国を守り抜く #自民党 #衆院選 #拡散希望 pic.twitter.com/T5iLVTGm2z
「過去最高」と自慢している。
どう思うよ。俺は怒りで頭がおかしくなりそうだぜ。
国民の知らないところで凄まじいインチキがされている。
なぜこのようなことをするのか?
アベノミクスが大失敗に終わっているからである。うまくいっていればこのようなことをする必要は無い。
アベノミクスがどのような失敗をしたか,そして,どれほどおそろしい副作用が待っているか,それは拙著「アベノミクスによろしく」を読んでいただければ分かる。
GDP改ざん疑惑についてもより詳細に分析している。
下記リンクは書籍のダイジェストだが,これだけでもだいたい理解できるはず。
この本では,「株価が上がった」「雇用が改善した」等,アベノミクスの成果とされているものまで全て客観的データをもって否定している。
この本を書かなければ,私の認識は「どれだけ自民党がひどくても,少なくとも経済は民主党時代よりマシ」という状態のままだったであろう。
今は違う。
アベノミクスは史上最低最悪の経済政策であり,我が国最大の国難である。
大失敗に終わっただけでなく,超巨大な副作用を孕んでいる。
民主党時代の方が圧倒的にマシであった。比較にすらならない。
この記事に対して文句を言いたくなる輩もいるだろうが,まずは拙著を読んでから文句を言っていただきたい。
==追記==
本当に内閣府に問い合わせたのか疑問という輩がいたので,内閣府から来た回答メールをここにそのまま載せる。
これは拙著の担当編集本川氏の問い合わせに対して,内閣府のI氏から回答されたものである。イニシャル加工と赤字部分は筆者。
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集英社インターナショナル 本川様
平素より大変お世話になっております。
内閣府経済社会総合研究所のIと申します。
昨日お問い合わせのあった件について連絡が遅くなり、申し訳ありません。
当方で確認しましたところ、「その他」は平成23年基準改定のうち、「2008SNA対応」を除いた部分になりますが、
産業連関表の取り込み、定義・概念・分類の変更、その他の推計方法の変更(建設コモ法の見直し)等々が含まれ、
様々な要素があり、どの項目にどれほど影響しているか等の内訳はございません。
ですが、以下の資料でそれぞれ、2008SNA対応とそれ以外で詳しく解説がありますので、
ご参考までに送付させていただきます。
プレアナウンス
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/seibi/2008sna/pdf/20160915_2008sna.pdf
↓さらに詳しく
利用上の注意
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h27/sankou/pdf/tyui27.pdf
↓さらに詳しく
季刊
http://www.esri.go.jp/jp/archive/snaq/snaq161/snaq161_c.pdf
------------
もちろんリンク先の資料も私は見ている。
「その他」についての説明はされているが,「具体的に」「どの項目が」「いくら」という内訳は無い。
ここでもう一度かさ上げの内訳表を見ていただきたい。
見ての通り,2008SNA対応部分については詳細な内訳がある。
しかし「その他」については,まったく内訳がない。ここで変な操作がされているなんて,よく見なければ気づかない。
この事実だけは本当に国民に知ってもらいたい。是非拡散を。
===追記2===
ブコメを見ると「内訳が書いてある資料がある」との指摘がある。
これはデマ。
ちゃんと読めば分かる。
前述のとおり,内閣府の資料には「その他」の説明は書いてある。
しかし,それだけ。
肝心の「具体的な数字」が書いていない。
私はその点を問題にしている。
2008SNA対応部分は,説明がある上に,「数字」で内訳がはっきり書かれている。しかし,「その他」には「数字の内訳」が出てこない。
だからブラックボックスになっているのである。
==追記3==
アベノミクス以降のかさ上げ額が極端に増えているのは,研究開発費が増えたからだ,との指摘を目にした。
ここは重大な点だから強調しておく。
「研究・開発(R&D)の資本化」は,「2008SNA対応部分」だ。
「その他」とは全く関係無い。
だから問題にしてるのだよ私は。
なお,この異常なかさ上げ現象を,私は「カサアゲノミクス」と呼んでいる。
#カサアゲノミクス
書籍版「アベノミクスによろしく」発売
以前このブログに書いた「アベノミクスによろしく」が元になった書籍が10月6日に発売されることになった。
単にブログの内容を書籍にしたものではない。ブログ版は前後編合わせても1万2000文字程度に過ぎなかったが,書籍版は8万文字ぐらい。大幅に加筆・修正している。
本書の特徴はそのデータ量。グラフと表が合わせて90近く出てくる。これほどデータを駆使した書籍は他に無いのではないかと思う。
本の内容を漫画と共にダイジェストで紹介する。
第1章 アベノミクスとは何か
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
この章ではアベノミクスが一体何なのかについて説明している。
アベノミクスはほぼ異次元の金融緩和に尽きると言ってよい。
それがどれくらい異次元のものであるかは,マネタリーベースの対名目GDP比をアメリカと比較すると分かりやすい。
このグラフを見たとき,日銀のやっていることがどれほど異常なことなのか,理解できるはずである。アメリカの金融緩和など比較にならない。
私は最初にこのグラフを見たとき,恐怖を感じた。
いくら異次元と言っても,ここまで異次元だとは思っていなかった。
第2章 マネーストックは増えたか
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
マネタリーベースというのは,「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+「日銀当座預金」の合計値のことである。ざっくり言えば,日銀が民間銀行に供給するお金と考えれば良い。日銀は民間銀行から国債を買いまくり,代わりにお金を渡している。これにより,民間銀行が日銀に持っている「日銀当座預金」の残高は異常なペースで増えている。
他方,マネーストックというのは,実際に世の中に出回っているお金のことである。民間銀行からの貸し出し等を通じて,世の中にお金が行き渡らなければ,マネーストックは増えない。マネーストックが増えなければ物価も上がらない。
では,そのマネーストックはどうなったのかについて分析しているのがこの章である。
特に,マネタリーベースとマネーストックを指数化して比較しているグラフが必見である。
私はこのグラフを見て爆笑してしまった。あまりのダダ滑りっぷりに。
これを見るだけでもアベノミクスは失敗だったと言い切ってよいような,衝撃的なグラフである。
思わず「全然そうなってませんけどォォォォォォ!」と叫びたくなるだろう。
第3章 国内実質消費は戦後最悪の下落率を記録
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
民間最終消費支出というのは,国内民間消費の総合計額のことである。
その実質値は,2014年度,リーマンショック時を超える下落率を記録した。
さらに驚くべきは,2015年度の実質民間最終消費支出はその2014年度をも下回った。
2年度連続で実質民間最終消費支出が下がるのは,政府が公開しているデータで見る限り戦後初である。
(なお,暦年データでみると,リーマンショック時も2年連続で実質民間最終消費支出が下がる現象は起きている。書籍では漫画の中のセリフが「2年連続」になっており,「度」が抜けている。これは間違いである。ゲラではそうなっていなかったのだが。重版になれはこの部分は直す予定である。)
そして,2014年度も2015年度も,アベノミクス開始前である2012年度の数値を下回った。
これほど消費が冷え込んだことを,一体どれだけの国民が知っているだろうか。
これを言うと「すべて増税のせい」と言う輩がいるが,誤りである。
2013年度~2015年度までの間に,消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く)は5%上昇した。
そして,日銀の試算によると,3%の増税による物価上昇は2%である。
犯人はアベノミクスである。異次元の金融緩和で無理やり円安にしたため,輸入物価が上がった。それが大きく影響した。
増税も,円安も「物価が上がる」という効果は同じである。
そして,給料が変わらないのに物価が上がれば消費が冷えるのは当たり前。
2013年度~2015年度の間に,名目賃金は0.5ポイントしか上がっていない(暦年だとわずか0.1ポイント)。だから,物価を考慮した実質賃金は4.3ポイントも落ちた。少なくとも過去22年度で最悪である。それが消費の落ち込みに直結した。
実質賃金下落について,「非正規が増えたから平均値が下がった」という最もらしいウソを信じる人が後を絶たない。しかし,よく考えていただきたい。それが本当だったら名目賃金も下がらなければならない。しかし,下がっていない。
実質賃金が下がった原因は,増税とアベノミクスで物価が上がったからである。そして,アベノミクスの影響の方が大きい。騙されてはいけない。
GDPの6割を占める民間最終消費支出がこれほど落ち込んだのだから,GDPはもちろん悲惨なことになった。国内経済はすさまじく停滞した。
ここで,アベノミクス失敗を象徴する現象を5つにまとめると下記のとおりである。
1.2014年度の実質民間最終消費支出はリーマンショック時を超える下落率を記録した。
2.戦後初の「2年度連続で実質民間最終消費支出が下がる」という現象が起きた。
3.2015年度の実質民間最終消費支出は,アベノミクス開始前(2012年度)を下回った(消費がアベノミクス前より冷えた)。
4.2015年度の実質GDPは2013年度を下回った(3年分の成長率が1年分の成長率を下回った。)
5.暦年実質GDPにおいて,同じ3年間で比較した場合,アベノミクスは民主党時代の約3分の1しか実質GDPを伸ばすことができなかった。
正に史上空前の大失敗を犯したアベノミクス。
アベノミクスがもたらしたのは「官製スタグフレーション」である。実質GDPを見れば明らかに経済が停滞したのだが,物価だけが上がってしまった。
しかし,信じられない出来事が,国民の全く知らないところで起きていた。それが次の第4章で明らかになる。
第4章 GDPかさ上げ疑惑
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
2016年12月8日,GDPは改定された。過去22年も遡って。
この事実をほとんどの国民が知らないだろう。
そして,知っている人は,この改定を「2008SNA対応」のためのものであると理解しているだろう。
2008SNAというのは,最新の国際的GDP算出基準である。この基準に従うと,新たに研究開発費等がGDPに加わるので,GDPが大きくかさ上げされる。
だが,この改定に際し,「その他」の名目で,異常なかさ上げがされたことに誰も気づいていない。
「その他」は2008SNAとまったく関係ない。このまったく関係ない部分において,アベノミクス以降だけが,異常にかさ上げされているのである。
この記事はあくまでダイジェストなのでグラフは本を買って見てほしいのだが,「その他」のかさ上げ額を示したグラフだけは特別に公開する。
アベノミクス以降だけ異常にかさ上げされてるのが一目瞭然である。
アベノミクス以前はむしろほとんどマイナスになっている。特に90年代は大きくマイナスになっている。1994年度と2015年度のかさ上げ額の差は実に15.3兆円。
同じ基準で改定したにもかかわらず,なぜこれほどかさ上げ幅に異常な差が出るのか。
一体この内訳はどうなっているのか。
担当編集者から,この「その他」の内訳について,GDPを作成した内閣府に問い合わせをしたところ,「内訳は無い」との回答であった。
そうであるならば,どうやってこのかさ上げ額を算出したのか。
内閣府からの回答により,私の中で「故意に数字を操作したのではないか」という疑惑がほぼ確信に変わった。
なお,「その他」だけでなく,2008SNA対応によるかさ上げ額もアベノミクス以降が1位~3位を占めている。
その結果,改定によるアベノミクス以降の数字はとんでもないことになっている。
私はこの現象を「カサアゲノミクス」と名付ける。
カサアゲノミクスによって,前述した「アベノミクス失敗を象徴する5つの現象」は一体どうなったのか,そして,カサアゲノミクスが何を目標にしているのか・・・それは本を読んで確かめていただきたい。衝撃的な事実がそこにある。
これは日本の借金返済能力をごまかす行為である。企業でいうなら粉飾決算。
森友・加計問題は「政策論争とは関係ない」という言い訳が通用するかもしれない。しかし,このカサアゲノミクス問題にその言い訳は通用しない。
アベノミクスという,安倍政権を支えてきた経済政策に対する重大疑惑である。
野党が本気で追及すれば,世界を揺るがす大問題に発展するかもしれない。
第5章 アベノミクスの成果を鵜呑みにしてはいけない
1.雇用改善とアベノミクスは無関係
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
アベノミクスの成果として最も強調されているのは,雇用の改善かもしれない。
しかし,それもデータを分析すると,アベノミクスと関係無いことが分かる。
雇用改善は,生産年齢人口の減少,医療・福祉分野の需要増大,雇用構造の変化(非正規雇用の増大)によるもので,民主党時代から続いていた傾向である。
特に,増えた雇用の内訳をみると,アベノミクスと関係ないことがよく分かると思う。高齢人口の増大で,医療・福祉分野の雇用は凄まじく伸びており,これが雇用改善に大きく影響している。
私の知る限り,雇用改善をアベノミクスの成果とする論者の中で,「増えた雇用の内訳」に言及している者はいない。内訳を見れば雇用改善がアベノミクスと関係無いのがよく分かるのだが。わざとやっているなら悪質,わざとでないなら分析が浅すぎる。
2.株価は日銀と年金でつり上げているだけ
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
株価が上がってはいるが,それは日銀(量的金融緩和,ETF爆買い)と年金(GPIF)によるものである。
実体経済は全く反映されていない。官製相場である。
公的資金の投入を止めれば,間違いなく株価は大暴落するだろう。
3.アベノミクスの恩恵を受けたはずの製造業でも実質賃金低下
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
アベノミクスにおいて最大の恩恵を受けたのは製造業である。
円安による為替効果で,莫大な利益を得た。
だが,その製造業の労働者ですら,実質賃金は下がっている。
物価が急激に上がりすぎたからである。
他の業種と比べれば,製造業の名目賃金は伸びているのだが,それ以上に物価が上がったため,結局実質賃金が下がってしまった。
最大の恩恵を受けた製造業ですら実質賃金が下がったのだから,一般庶民はアベノミクスによる恩恵を全く受けていない。
ただ単に,実質賃金を下げられただけ。エンゲル係数も急上昇。
ただひたすらに,生活が苦しくなっただけ。
その事実に,気付かなければならない。
4.賃上げ2%を達成できたのは少数
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
「3年連続賃上げ2%達成」というのは,前回の参議院選挙の際に流れていた自民党のテレビCMで強調されていたものである。
しかし,統計的に見ると,賃上げ2%を達成できたのは全労働者のわずか5%に過ぎない。
日本の民間企業の労働組合組織率は約16%しかない。しかも,労働組合が組織されているのは大きな企業に偏っている。したがって「物価が上がったから賃上げしろ」という圧力が使用者にかかりにくい。それが日本の賃金が上がらない一つの要因になっている。
さっきも言ったが,ほとんどの労働者は,アベノミクスによって,ただ単純に実質賃金を下げられただけである。
第6章 第3の矢は労働者を過労死させる
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
3本の矢からなるアベノミクスであるが,第3の矢で何を用意しているかと言えば,残業代ゼロ法案である。
しつこくしつこく「時間では無く成果で評価する制度」などと報道されているが,まっ赤な嘘である。成果給を義務付ける条文が法案に入っていないのだから。
ただ単に残業代をゼロにされるだけである。
この法案については,私が所属するブラック企業対策被害弁護団のウェブサイトに「ブラック法案によろしく」というコンテンツを作ってあるので,是非見ていただきたい。
http://black-taisaku-bengodan.jp/burahou/
「テキストで読むのなんてめんどくせーよ」という方には動画バージョンも用意してある。
なお,この動画に出てくる声は全て私である。1人で20役近く演じ分けている。
つい最近,より端的に残業代ゼロ法案の対象者が分かる内容にした「ブラック法案によろしく2」も作った。こちらもついでに見ていただきたい。
http://black-taisaku-bengodan.jp/burahou-2/
残業代ゼロ法案は単なる金の問題ではない。命にかかわる問題である。
今回の衆議院解散で形式的には廃案になったが,必ず再提出されるであろう。
なお,残業代ゼロ法案は,残業時間上限規制を骨抜きにする内容である。したがって,残業代ゼロ法案を通してしまったら「働き方改革」など絶対に実現できない。
これ以上長時間労働の犠牲者を増やしてはならない。
残業代ゼロ法案についても是非今回の衆議院選挙で争点にしていただきたい。
労働者にとっては最も身近で影響のある問題なのだから。
第7章 アベノミクスの超特大副作用
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
この章では,日本の財政状況と,国債発行の仕組みについて解説した上で,金融緩和を止めるとどうなるのかを予想している。
当然である。借換債も含めると,日銀が儲け度外視で毎年約120兆円も国債を爆買いしているのだから。
では,それを止めるとどうなるのか・・・
逆に,止めないでずっと続けたらどうなるのか・・・
この章に書いてあるのはあくまで私の予想である。そして,外れてほしい予想でもある。あまりにも悲惨だから。
アベノミクス最大の問題点は,巨大すぎる副作用である。
第8章 それでも,絶望してはいけない
【©「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰】
この章では総まとめを書いている。
アベノミクスは,壮大な現実逃避である。事実上の財政ファイナンスという禁じ手を使い,財政再建から逃げ続けている。
こんな現実逃避を続ける国家の通貨が,信用を保てるだろうか。私はそうは思わない。
このままではいつか円が暴落する時がくると思っている。それがいつになるかは分からない。
現実逃避が長引くほど,逃げられなくなった時のダメージは大きくなる。
だから,痛みを覚悟してでも,一刻も早くこの現実逃避を止めなければならない。
安倍総理は今回の解散を「国難突破解散」と名付けたが,我が国最大の国難はアベノミクスの副作用である。「円の存立危機事態」が引き起こされている。
円が暴落すれば社会保障も国防もままならない。
この本がつきつけるのは厳しい現実である。
見たくもない,信じたくもない現実である。
だが,目をそらさないでほしい。一人でも多くの方にこの現実を知っていただきたい。
このダイジェストを読んで文句を言いたくなる人もいるだろうが,まずは本を読んでから文句を言っていただきたい。この記事はあくまでダイジェストに過ぎないのだから。
ところで,本に出てくる「モノシリン」というのはコイツである。
どうも担当編集に「ふざけたキャラ」と思われたらしく,本には載せてもらえなかった。ま,別にいいのだが。
そして,「太郎」というのはコイツである。
エクセルで適当に作った,適当なキャラである。私自身がわりと毒舌なので,太郎君も毒舌キャラなのだが,担当編集にはその部分をカットされ,牙を抜かれたおとなしい男子になっている。
この1匹と1人が色々な「仕組み」についてトークするのがこのブログのメインコンテンツである。全然閲覧数は稼いでいないのだが。
これは本当に各記事3分で読み終わる短さである。
目次~このブログについて~ - モノシリンの3分でまとめるモノシリ話
この本は221ページしかない短い本なのでサクッと読み終わると思う。新書だからコンパクトだし,値段も税抜740円とお買い得である。
経済の知識が全くない人でもわかる内容である。用語解説もかなり詳しくした。
1人でも多くの人に読んでほしい。