モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

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【番外編】ラグビー日本代表が南アフリカ代表に勝ったことの凄さを詳細にまとめてみる(5)

f:id:monoshirin:20151008215747j:plain ラインアウトというのは,ボールがタッチラインの外に出た場合に発生するセットプレーだ。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain フッカーがボールを投げ入れて,主にロックの選手がそのボールをキャッチする。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain 実際のラインアウトを見てみよう。これは南アフリカのマットフィールドを特集した動画だ。ラインアウトの場面がたくさん写っている。


 

f:id:monoshirin:20151008215749j:plain これ,背が高い方が有利だね。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そのとおりだ。高さで相手に勝っていれば,ボールを確保できる可能性は非常に高くなる。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain 世界レベルだと,ラインアウトでジャンパーを務めるロックの選手の身長は2メートルを超えるのがほとんどだ。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain 南アフリカも,左ロックのマットフィールドは201センチ,右ロックのデヤガーは205センチもある。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain ちなみに,マットフィールドは38歳。南アフリカの「レジェンド」と言われるほどの選手で,ラインアウトの名手だ。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 日本はそんなに背の高い人いるの。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain 左ロックのトンプソンは196センチ,右ロックの大野は192センチだ。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain 他に背の高い選手と言うと,右フランカーのブロードハースト(196センチ)がいる。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 2メートル台の選手はいないんだね。高さはでは圧倒的に負けてるな。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだ。ジャンパーを持ち上げるリフターの身長も南アフリカの方が高いから,まともに張り合うと極めて不利になる。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 高さ以外の創意工夫が必要になるね。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そのとおりだ。その創意工夫の跡を,ラインアウトの受け手の比較で確認してみよう。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain まずは南アフリカだ。下記の表は各ラインアウトでの受け手とその身長,及びポジションだ。

 

NO受け手身長ポジション
1 マットフィールド 201 左ロック
2 ロウ 190 フランカー
3 デヤガー 205 右ロック
4 マットフィールド 201 左ロック
5 マットフィールド 201 左ロック
6 マットフィールド 201 左ロック
7 バーガー 193 ナンバーエイト
8 デヤガー 205 右ロック
9 デュトイ 200 フランカー
10 マットフィールド 201 左ロック
11 デヤガー 205 右ロック
12 マットフィールド 201 左ロック
13 デヤガー 205 右ロック
14 デヤガー 205 右ロック
15 マットフィールド 201 左ロック

f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 全15回中,マットフィールドが7回,デヤガーが5回で,左右のロックがほとんどを占めているね。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain それ以外の3回のうち1回は身長2メートルのデュトイだから,2メートル未満の選手が受け手になったのは2回しかないね。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだ。南アフリカが高さを生かしたラインアウトをしているのがここから分かるだろう。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain では次に日本を見てみよう。

NO受け手身長ポジション備考
1 立川 181 センター  
2 トンプソン 196 左ロック  
3 トンプソン 196 左ロック ターンオーバーされた
4 大野 192 右ロック  
5 ツイ 189 ナンバーエイト  
6 トンプソン 196 左ロック ここからトライ
7 ツイ 189 ナンバーエイト  
8 ツイ 189 ナンバーエイト  
9 リーチ 190 フランカー  
10 ブロードハースト 196 フランカー  
11 トンプソン 196 左ロック ここからトライ
12 ブロードハースト 196 フランカー  

f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 全12回中,ロックが受け手を務めたのはトンプソンが4回,大野が1回だね。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain ロックが受け手になっているのが半分以下ってことだな。南アフリカと大違いだ。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだ。トンプソンと同じ身長のブロードハーストも受け手になっているけど,2回だけだ。 

f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 南アフリカと比べると受け手がバラバラだから,相手は的を絞りづらいね。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだ。日本代表は高さで勝負していないと言い得る。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain だいたい,最初の立川なんてフォワードですらないじゃん。これ,どういうこと?
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain それは下記の動画を見てごらん。

 

※該当シーンから再生開始します。

f:id:monoshirin:20151008215749j:plain これ,相手はびっくりするね。いきなりどこに投げてんのってなるよ。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだね。堀江がはるか彼方にボールを投げて,そこに走り込んだ立川がキャッチしている。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain これは堀江の卓越したスローイングスキルを示す好例だ。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain ラインアウトの際,ボールは真っ直ぐ投げ入れなければならない。右や左にそれると「ノットストレート」という反則を取られる。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain あれだけの長い距離を真っ直ぐ投げるって,凄いね。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだ。長距離を真っ直ぐ投げるには,ボールの先端が進行方向に真っ直ぐ向いていなければならない。さらに,ボールの回転も重要だ。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 前に銃のところで説明していた,回転すると物体の姿勢が安定するジャイロ効果のことね。

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f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そのとおり。堀江の投げるボールは非常に美しい回転がかかっていて,ボールの先端も真っ直ぐ進行方向を向いている。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain それに加え,ボールの速度も非常に早く,しかも正確だ。間違いなく世界最高レベルのスローイングだろう。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain この試合,日本はラインアウトにおいて1度の失敗を除き全てボールをキープした。それは堀江の卓越したスローイングスキルが大きく貢献している。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain 他にも工夫したところを見てみよう。このシーンを見てごらん。

 

※該当シーンから再生します。

f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 投げるまでが異常に早いね。カメラも追い切れてないくらいだ。しかもジャンプして取らせるんじゃなくて,一番前にいるツイにそのままいきなり投げてる。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだ。このようにクイックスローイングをして相手に邪魔するスキを与えないようにしている。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain こちらのトリックプレーも面白い。見てごらん。大野の位置に注目だ。

 

※該当シーンから再生します。

f:id:monoshirin:20151008215749j:plain いつの間にか一番後ろにいた大野がジャンパーになってるね。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだ。ラインアウトの列から離れて立っていたツイが投げる瞬間に列に加わり,大野を持ち上げている。

 

※上記動画から引用

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f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 凄いトリックプレーだな。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだね。では最後に,ラインアウトからトライを奪ったシーンを見てみよう。

 

※該当シーンから再生します。

f:id:monoshirin:20151008215747j:plain トンプソンがボールをキャッチした後に注目だ。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain ボールを少しずらしてブロードハーストに渡しているね。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そのとおり。こうやって少しずらすことによって,有利な体勢が組みやすくなる。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そしてその後,モールに小野(10番),立川(12番),松島(11番)のバックス3人が参加しているのが分かるだろう。

f:id:monoshirin:20151008215747j:plain ちなみに,モールというのは,ボールを持った状態でそのまま多人数で固まって押し込んでしまうという技だ。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain モールを組む場合,参加するのは基本的にフォワードだけだ。バックスは,モールで押し込みきれなかった場合に備えて,後ろでラインを形成して待つのが普通だ。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain そのセオリーに反して,バックスも参加したんだね。合計11人になるから,フォワード8人だけで対抗している南アフリカはひとたまりもないね。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだ。セオリーに反する大技でトライを奪った。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain それもラインアウトでボールを確保できたからこそだ。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain ちなみに,トンプソンは4回受け手になっているけど,そのうち2回が上記の場面も含めトライに繋がっている。
f:id:monoshirin:20151008215749j:plain 日本代表は大事な場面ではトンプソンを使ったと言えるかもね。
f:id:monoshirin:20151008215747j:plain そうだね。そしてそこでボールを確保できたのは,創意工夫をして的を絞らせなかったからと言えるだろう。

f:id:monoshirin:20151008215747j:plainでは次に,後半の五郎丸のトライについて見てみよう。

 

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