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モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

モノシリンがあらゆる「仕組み」を3分でまとめていきます。

作者の連絡先⇒ monoshirin@gmail.com

アベノミクス3年間で実質的に下がった賃金は,トヨタのベア10年分です。

アベノミクス

アベノミクスの3年間で,実質賃金指数は4.6ポイント落ちた。

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毎月勤労統計調査 平成27年分結果確報|厚生労働省

 

「4.6ポイント落ちた」と言われてもしっくりこないと思う。

ということで,この「4.6ポイント」を具体的な数字にしてみた。

 

毎月勤労統計調査の指数は,平成22年の実数を100とした場合の数字である。

したがって,「4.6ポイント落ちた」というのは,「平成22年の月額平均給与の4.6%落ちた」ということを意味する。

平成22年の月額平均給与は31万7,321円である(下記リンク先で実数の記載されたエクセルをダウンロードできる。)

最新結果一覧 政府統計の総合窓口 GL08020101

 

したがって,実質的に下がった賃金は31万7,321円×4.6%=1万4596円となる。

年額だと17万5152円下がったということである(月額を単純に12倍)。

 

アベノミクス3年間で実質的に下がった賃金は,トヨタのベア10年分です

月額1万4596円。これがどれほど恐ろしい数字であるかは,世界のトヨタを基準にするとより分かりやすい。

トヨタの今年のベースアップは1500円であった。

www.nikkei.com

 

つまり,アベノミクス3年間で落ちた賃金は,トヨタの2016年ベアの約10年分ということである。

世界のトヨタの今年のベアと同じペースで10年間,国民全体の名目賃金が伸び続けてやっと元の水準に戻るということである。

ただし,それは消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)が104.6(2015年)であることを前提とする。

今後もっと物価が上がれば,元に戻すのにもっと年数がかかる計算になる。

そして安倍総理と黒田総裁はまだまだ物価を上げる気マンマンである。前年比2%で。

 

驚くのはまだ早い。次に述べるとおり,現実には,国民全体の名目賃金トヨタのベアと同じペースで上がり続けることは絶対にあり得ない。

 

この3年間の名目賃金上昇ペースは,年間約100円です

下記は過去10年の名目賃金の推移を示すグラフである。アベノミクスの3年間で0.1しか伸びなかった。

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毎月勤労統計調査 平成27年分結果確報|厚生労働省

 

 

0.1というのは,実数にすると317円(31万7,321円×0.1%)である。

3年間で317円だから,年平均にすると約100円である。

年100円のペースで,1万4596円上げようとすると,146年かかる。

その計算も,あくまで2015年の消費者物価指数104.6が前提。

これが下がればいいのだが,安倍総理と黒田総裁に下げる気はサラサラ無い。

 

ところで,下記のグラフのとおり,業種を分けて細かく見ると,名目賃金が伸びたのは製造業のみである。アベノミクスによる円安の恩恵を受けたからであろう。それが全体の平均を上げ,かろうじてマイナスになることを防いでいる。

(※厚労省のデータでは,「製造業」,「卸売・小売」,「医療・福祉」のカテゴリに分けた名目賃金指数がある。これ以外のカテゴリはない。)

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毎月勤労統計調査 平成27年分結果確報|厚生労働省

 

なお,このように好調であるはずの製造業ですら,下記グラフのとおり実質賃金は低下している。これは後述するとおり,物価が上がり過ぎたからである。

アベノミクスの恩恵を受けた製造業も,「アベ・ウォール」を超えることができなかったのだ。

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毎月勤労統計調査 平成27年分結果確報|厚生労働省

 

 

物価がこのままと仮定した場合,下落した実質賃金1万4596円が元に戻ることはあり得ない。なぜなら,上記のとおり,この3年間で名目賃金はほとんど伸びていないどころか,製造業以外では落ちているからである。

仮に上がったとしても,今年のトヨタのベアと同じペースですら10年かかる。しかもその10年というのは,物価がこれ以上上がらなかった場合である。安倍総理も黒田総裁ももっと物価を上げようとしている。

 

ちなみに,仮に名目賃金がこの3年間で年平均5000円ずつ伸びていたら,実質賃金は下がっていない。が,それがあり得ない話であることは十分に分かったと思う。

 

アベノミクスを続ける限り,実質賃金は永遠に元に戻らない。

 

 原因は物価の急上昇です

実質賃金がトヨタのベアの10年分も下がる異常事態が発生したのは,物価急上昇が原因である。3年間で4.9ポイントも上昇した。

この急激すぎる上昇が描く線をアベ・ウォール(アベの壁)という。

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総務省統計局統計表一覧

 

 何故上がったのか。まずは平成26年の増税である。

そして,黒田バズーカ(異次元の金融緩和)によって凄まじい円安となり,輸入物価が上がったからである。

増税だけでは4.9ポイントも上昇しない。黒田バズーカの影響が極めて大きい。

我々は知らないうちに黒田バズーカの砲撃を喰らいまくっていたのである。

 

そして消費が壊滅しました

 下記のグラフは過去10年間の実質家計消費支出指数である。

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統計局ホームページ/家計調査 家計消費指数 結果表(平成22年基準)

 

 3年間で5.8ポイントも落ちた。この圧倒的急降下をアベ・コースターと呼ぶ。

実質賃金低下が影響していることは明白である。

 

 この家計消費の急降下が,GDPの6割を占める実質民間最終消費支出の急降下を招いた。とうとう2015年の数字がアベノミクス前の2012年を下回ってしまったのである。

下記のグラフは過去4年間の実質民間最終消費支出の推移。

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内閣府の統計データを元に作成。

 

 このように,「実質民間最終消費支出が3年前を下回る」という現象は,リーマンショックの翌年である2009年以来の超異常現象である。

下記のグラフは過去22年間の実質民間最終消費支出の推移。

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内閣府の統計データを元に作成。

 

実質民間最終消費支出は上記のとおり基本的に右肩上がりで,下がったのは22年間で5回しかない。そのうち2回がアベノミクスである。

下がり方もアベノミクスが一番大きい。

リーマンショック級の異変は既に起きていたのである。

こんな状態だから,名目賃金が伸びないのである。そもそも儲かっていないのだから,賃上げする理由が無い。

理屈通りなら,消費は上がっていたはず

 アベノミクスを推進したリフレ派の主張によれば,無理くりインフレにすると,人々がインフレ予想をして,お金を使うようになり,消費が伸びるそうである。

インフレはお金の価値が下がることを意味するので,持っていても損するから使うようになるというのである。

この理屈が正しければ,実質賃金がどうなろうと,消費は伸びていくはずであった。

だが,実際はインフレ予想など誰もしなかった。

単に給料が実質的に下がったので,財布の紐が固くなっただけだった。

リフレ派の理論が間違っていたことが,完膚無きまでに証明されてしまった。

しかし,安倍総理は未だに「アベノミクスのエンジンをふかしていく」とか言っている。

ふかすな。やめてくれ。

もう誰もインフレ予想なんかしないよ。「物価目標が達成できません」って散々報道されているんだから。だったらリフレ派の理論を前提にしても消費は伸びないでしょ。

 

アベノミクスは単なる官製スタグフレーションになり果てた。

アベノスタグフレーションである。

もっと平たく言えば,「ただの賃下げ政策」である。

「ただの賃下げ政策」を国民が支持する理由がどこにあるのだろうか。

右派も左派も関係ない。イデオロギーは全く関係ない。アベノミクスは国民共通の敵なのである。

 止めるチャンスは,今のところ,参院選しかない。

 

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 ↓「俺らこんなアベいやだ」(「俺ら東京さ行ぐだ」の替え歌)はこちら

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 ↓「ブラックジャックによろしく」を使ってアベノミクスをまとめた記事がこちら

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