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モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

モノシリンがあらゆる「仕組み」を3分でまとめていきます。

作者の連絡先⇒ monoshirin@gmail.com

雇用増加はアベノミクスと全然関係ありません

安倍総理は2013年~2015年の3年間で雇用者が110万人増えたことを「アベノミクスの効果」と謳っている。

この雇用増がアベノミクスと関係無いことは既に「【完結編】続・アベノミクスによろしく」でも触れている。

今回,さらに深く掘り下げて調べてみたところ,やっぱり雇用増とアベノミクスは全然関係ないことがよりよく分かったのでそれについて書く。

おさらい

初めてこのブログを読む方もいると思うので,まずアベノミクスの失敗を要約する。

簡単に言えば「給料はそのままなのに物価だけ上げまくったので消費が冷えた」ということである。

これは下記グラフのとおり。


1.物価が急上昇したのに(赤)
2.給料はそのまんまだったので(オレンジ)
3.物価を考慮した実質賃金が下がり(青)
4.消費が急激に冷え込んだ(緑)

 

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毎月勤労統計調査 平成27年分結果確報|厚生労働省

総務省統計局統計表一覧

統計局ホームページ/家計調査 家計消費指数 結果表(平成22年基準)

 

そしてこれが実質GDPの6割をしめる実質民間最終消費支出の低下に直結した。

アベノミクス前よりも下がってしまったのである。

増税でただでさえ物価が上がるというのに,黒田バズーカで無理矢理円安にしたのでさらに物価が上がってしまった。

消費者は往復ビンタを食らったような状態になるので,消費が下がるのは当然の結果である。

 

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内閣府の統計データを元に作成。

 

下記のグラフは上記のグラフの期間を過去22年間にまで広げたもの。見てのとおり,実質民間最終消費支出は基本的に右肩上がりなので下がること自体が滅多に無い。

下がったのは過去22年間でたったの5回。そのうち2回をアベノミクスが占める。

そして,「3年前より下がる」という現象が起きたのは,あのリーマンショックの翌年2009年依頼の超異常現象。

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内閣府の統計データを元に作成。

 

この民間消費の異常な冷え込みが大きく影響し,3年間で比較すると,結局安倍政権は民主党政権の約3分の1しか実質GDPを伸ばすことができなかった。

f:id:monoshirin:20160620232729j:plain

内閣府の統計データを元に作成。

 

 

つけたし~年度でみるともっと酷いんだぜ~

私のブログで扱っているデータは全て暦年(1月~12月)のデータで揃えている。

ところで,政府が公表しているデータには年度(4月~翌年3月)のものもある。年度で見てみると,アベノミクスの失敗はより際立っている。

年度の方が特に消費増税の影響を捉えやすい。増税は4月1日になされるからである。

 

まずは年度でみた実質民間最終消費支出の推移をご覧いただきたい。

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内閣府の統計データを元に作成。

 

 

年度で見ると,過去22年度で,前年度より下がったのは4回しかない。

ひとつひとつ見てみると,1997年度は前年度より下がっているが,これは消費税の増税が影響している。1997年4月1日に消費税は3%から5%に増税された。

しかし,翌年にはもう前年を上回って上昇基調に転じている。

次は,2008年度である。この年度はあのリーマンショックが起きた年度であった。

しかし,その翌年度には前年度を上回って上昇基調に転じている。

 

増税しても,リーマンショックがあっても,翌年度にはもう上昇基調に転じているのである。日本の国内消費は本当に強い。

ところが・・・2015年度を見ていただきたい。2年度連続で下がってしまっているのである。リーマンショックの時ですら起きなかった「2年度連続で下がる」という現象が起きたのである。この現象はひょっとすると戦後初かもしれない。

 

2014年度の落ち方も注目である。リーマンショックの年度よりも落ち方が激しい。

これは,駆け込み需要の反動減+増税による物価上昇+円安による物価上昇というトリプルパンチをくらったせいである。前年度と比べると実に約9兆円も下がっている(リーマンショックの時は約6兆)。

そして,ただでさえ増税の影響で消費が冷えるところに,黒田バズーカによる物価上昇でさらに追い打ちをかけたため,2015年度も消費は回復しなかった。

 

次に,下記のグラフは年度でみた実質GDPである。

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内閣府の統計データを元に作成。

 

 

ここで注目すべきは,2015年度の実質GDPは2013年度を下回っているということである。駆け込み需要で伸びた2013年度を超えることができていないのだ。

 

そして,過去22年度の実質GDP推移を見てみると,2年度前より実質GDPが下がったのは,2015年度を含め過去5回しかない。

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内閣府の統計データを元に作成。

 

 

アベノミクスの尋常では無い失敗ぶりがよく分かったと思う。アベノミクスは明らかに我が国の経済を停滞させた。停滞したのに物価だけは上がったから,スタグフレーションを引き起こしたと言い切るべきだろう。

だから,雇用増とアベノミクスは関係無いと考えるべきなのである。

ここからが本題。

この3年間で増えた雇用の内訳

下記の表はこの3年間で増えた雇用の内訳である。増えた数の多い順に並べてある。

NO 業種
平成24年

平成27年
増加
雇用者
(②-①)
1 医療,福祉 676 751 75
2 その他 37 68 31
3 卸売業,小売業 938 963 25
4 情報通信業 180 200 20
5 宿泊業,飲食サービス業 311 324 13
6 複合サービス事業 47 59 12
7 教育,学習支援業 267 278 11
8 不動産業,物品賃貸業 98 107 9
9 学術研究,専門・技術サービス業 157 166 9
10 公務(他に分類されるものを除く) 224 230 6
11 製造業 980 984 4
12 漁業 5 8 3
13 農業,林業 52 53 1
14 鉱業,採石業,砂利採取業 3 3 0
15 電気・ガス・熱供給・水道業 31 29 -2
16 建設業 411 407 -4
17 運輸業,郵便業 326 321 -5
18 金融業,保険業 159 150 -9
19 生活関連サービス業,娯楽業 184 175 -9
20 サービス業(他に分類されないもの) 418 364 -54
      増加合計 136

 

出典:統計局ホームページ/労働力調査 長期時系列データ

(※このデータによると,3年間で増えた雇用者は136万人となっており,安倍総理が言っている110万人とのズレがある。これは,安倍総理が引用しているデータが「詳細集計」である一方,こちらのデータが「基本集計」だからである。基本集計は調査区内から選定された約4万世帯が調査対象となっているが,詳細集計は基本集計の対象世帯のうち約1万世帯が対象となっている,等の違いがある。詳しくは総務省時計局のウェブサイト参照。産業別雇用者数を把握できるのは基本集計のみ。なお労働力調査とは全数調査ではなく標本調査であるから,各数値はあくまで推計値である。)

 

医療・福祉が他を大きく引き離してぶっちぎりの1位である。これは高齢化が進んで介護の需要が伸びたからであろう。景気がどうなろうと,今後も確実に増加していくと見て間違い無い。

2位の「その他」は統計局の分類にあてはまらないものを指しているが,具体的に何を意味しているのか分からないのでコメントできない。

3位に卸売業,小売業が入っているが,伸びたのは小売業だろう。

ちょっと調べてみたが,小売業が伸びた要因としてまずコンビニの増加が挙げられる。

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出典:コンビニエンスストア 統計データ|一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会

 

この3年間で6639店も増えている。

下記の記事によると,コンビニ1店舗あたりだいたい20人くらい必要になるとのことなので,単純に計算すると13万2780人増えたことになる(6639×20)。

biz-journal.jp

この記事によると,セブン,ローソン,ファミマで出店競争しているらしく,それがこの店舗数の増大につながっているのだろう。

それから,大型小売店舗の拡大も雇用増大に大きく影響していると思われる。

下記のグラフはイオンのウェブサイトから引用した,イオンの設備投資の推移である。設備投資を増やしているということは店舗を増やしているということだろう。それに伴って当然雇用も増える。

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出典:イオン | 株主・投資家の皆さまへ | 財務・業績情報 | 設備投資

 

このように,コンビニをはじめ,大手の小売会社が出店を拡大していることが雇用増大に影響していると思われる。

 

きりが無いのでコメントはこの程度にしておく。ここでもう一度さっきの表を見ていただきたい。

NO 業種
平成24年

平成27年
増加
雇用者
(②-①)
1 医療,福祉 676 751 75
2 その他 37 68 31
3 卸売業,小売業 938 963 25
4 情報通信業 180 200 20
5 宿泊業,飲食サービス業 311 324 13
6 複合サービス事業 47 59 12
7 教育,学習支援業 267 278 11
8 不動産業,物品賃貸業 98 107 9
9 学術研究,専門・技術サービス業 157 166 9
10 公務(他に分類されるものを除く) 224 230 6
11 製造業 980 984 4
12 漁業 5 8 3
13 農業,林業 52 53 1
14 鉱業,採石業,砂利採取業 3 3 0
15 電気・ガス・熱供給・水道業 31 29 -2
16 建設業 411 407 -4
17 運輸業,郵便業 326 321 -5
18 金融業,保険業 159 150 -9
19 生活関連サービス業,娯楽業 184 175 -9
20 サービス業(他に分類されないもの) 418 364 -54
      増加合計 136

 

アベノミクスでやったことは金融緩和をして無理やり円安にしたことだけである。したがって,「アベノミクスで雇用が増えた」と言うためには,「円安」と因果関係が無ければならないだろう。

ところが,1位の医療・福祉は介護需要の増大によるものだし,3位の小売りも国内需要を当てにしているから円安は関係ない。むしろ仕入れ値が上がるので円安はマイナスにしかならないだろう。他の産業も,円安で明らかな恩恵を被りそうなものは見当たらない。ほとんどが内需に頼る産業である。

したがって,アベノミクスがあろうとなかろうと,勝手にこれらの産業の雇用は伸びていたというべきであろう。むしろ,アベノミクスによる消費の冷え込みが無ければ,もっと伸びていたかもしれない。

 

では,円安により明らかに恩恵を受ける製造業はどうかというと,たったの4万人しか増えていないのである。

上記表をよく見ると分かるが,雇用者数を見ると製造業は産業別で最も多い(984万人)。しかし,この3年間では4万人しか増えていない(980万人⇒984万人)。

なぜか。それは,下記のグラフを見ると分かる。これは,平成22年を100とした場合の輸出金額指数,輸出価格指数,輸出数量指数をグラフにしたものである。

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出典:他の年月の統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020102

 

輸出金額とはつまり輸出した金額の合計額であり,輸出価格とは「単価」である。

上記のグラフを見ると,円安の影響で単価が上がり(赤),それによって輸出の合計額(青)も上がっていることが分かる。

しかし,数量(緑)は変わっていない。むしろ,落ちている(91.6⇒89.8)

円安で日本の輸出品がたくさん売れるようになったわけではないのだ。

ただ単に,単価が上がったので儲かっただけ。

数量が変わらないのだから,製造の人手を増やす必要は無い。だから4万人しか増えていないのである。

 

中小製造業にとっては本当に苦しい3年間だったのではないか。円安で材料の単価が上がるが,取引の数量が増えるわけではない。円安で儲かるのは最終的に海外に完成品を売る大企業だけ。その大企業に国内で部品等を納入する中小製造業には円安の恩恵はないだろう。

以上のとおりであるから,雇用増加はアベノミクスと全然関係ないのである。

 

アベノミクスの失敗についてより詳細に知りたい人は下記のリンクを参照されたい。

 

↓「アベノミクスによろしく」はこちら

blog.monoshirin.com

 

↓「【完結編】続・アベノミクスによろしく」はこちら

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↓作者による動画解説はこちら