読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

モノシリンがあらゆる「仕組み」を3分でまとめていきます。

作者の連絡先⇒ monoshirin@gmail.com

ハイビームの法的根拠についてマニアックに語る

最近,警察庁が車のライトについて「ハイビームを基本に」と呼びかけていることが話題になっているらしい。

www.j-cast.com

 

法的に言うと,元々夜間走行の際の車のライトはハイビームが基本となっている。例外的にロービームが許されるのは対向車がある場合や他の車の直後を進行する場合である。根拠条文は道路交通法52条。以下引用する。

(車両等の灯火)
第五十二条  

1 車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。以下この条及び第六十三条の九第二項において同じ。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあつても、同様とする。

1項を読むだけではよく分からないかもしれない。端的に言って「夜はライトつけなさいよ」と言っているだけだからである。「ハイビームにしろ」と明言しているわけではない。

そこで,この条文の2項を読むとこう書いてある。

2  車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。

つまり,対向車がある場合や他の車両の直後を進行する場合は,政令の定めに従って,ライトを消したり弱めたりする等ライトを操作しろと書いてある。

この「灯火の光度を減ずる」等の具体的な方法について,道路交通法施行令20条は下記のとおり定めている。

(他の車両等と行き違う場合等の灯火の操作)
第二十条  法第五十二条第二項 の規定による灯火の操作は、次の各号に掲げる区分に従い、それぞれ当該各号に定める方法によつて行うものとする。
一  車両の保安基準に関する規定に定める走行用前照灯で光度が一万カンデラを超えるものをつけ、車両の保安基準に関する規定に定めるすれ違い用前照灯又は前部霧灯を備える自動車 すれ違い用前照灯又は前部霧灯のいずれかをつけて走行用前照灯を消すこと。
二  光度が一万カンデラを超える前照灯をつけている自動車(前号に掲げる自動車を除く。) 前照灯の光度を減じ、又はその照射方向を下向きとすること。
三  光度が一万カンデラを超える前照灯をつけている原動機付自転車 前照灯の光度を減じ、又はその照射方向を下向きとすること。
四  トロリーバス 前照灯の光度を減じ、又はその照射方向を下向きとすること。

普通の車が該当するのは上記の2号だろう。つまり,ライトの光を弱めるか,又は下向きにしろと言っている。

まとめよう。道路交通法52条2項及び同法施行令は,対向車とすれ違う場合や他の車の直後を進行する場合,例外的に,ライトを下向きにする等の対応をしろと言っている。

そうすると,それ以外の場合は,「ハイビーム」にしなければならないということになる。

したがって,道路交通法52条1項で「夜はライトをつけろ」と言っているのは,原則として,「ハイビーム」を意味している,という結論になる。

 

しかし,普通に街中を走行する場合,対向車もあるし,直前車もある。つまり,道交法52条2項の「例外」が適用される。結局,「例外」であるロービームが許容される状況の方が事実上多くなるものと思われる。つまり原則と例外が逆転する。

 

なぜ,夜は原則ハイビームと法律で定められたのか。これには当然合理的な根拠がある。端的に言うと,ロービームだと障害物に気付いても止まれないのである。

 

まず,「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」120条によれば,ハイビームの照射距離は100メートル(同条2項1号),ロービームの照射距離は40メートル(同条6項1号)と定められている。

http://www.mlit.go.jp/common/001056415.pdf

 

そして,茨城県警の下記資料によれば,次の記載がある。

https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a02_traffic/archives/blockprint/pdf/h28/h28-101.pdf

下向きライトの照射距離は約40mです。時速60kmで走行した場合の停止距離は約40mで、歩行者がライトに照らされてからでは、事故回避が困難となります。

これがハイビームが要求されている理由である。

茨城県警は以前からハイビームの必要性の周知に熱心であり,毎月,交通事故かわら版の号外として「ライト切り替えによる交通事故防止」を公表している。

交通安全かわら版 | 茨城県警察

 

下記の画像は平成28年1月の号外(平成27年中の事故をまとめたもの)から引用したものである。

https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a02_traffic/archives/blockprint/pdf/h28/h28-101.pdf

 

f:id:monoshirin:20161026232755j:plain

 

茨城県内で起きた夜間の死亡事故37件,そのうちライト下向きが36件(97%),さらに上向きなら回避できた事件がそのうち19件(53%)と記載されている。

 

また,夜間の事故37件中,「右から横断」が19件(約49%)と記載されている。

これは下記のような状況だろう。

f:id:monoshirin:20161026234500j:plain

ところで,前掲「号外」によれば,平成27年中に茨城県内で発生した夜間死亡者37人のうち,22人(59.5%)が高齢者である。

夜間人通りの少ない道路において,車との距離を見誤って道路を横断してしまった高齢者がはねられる事故が多いのではないかと思われる。

 

こうやって見て行くとハイビームの重要性が良く分かる。しかし,さっきも言った通り,現状は原則と例外が逆転している。したがって,こまめにライトの切替えをするのは難しいと思う。

 

最も良いのは自動でライトの切替えをしてくれる機能をつけることだ。

今はそのような機能がついた車も開発されているらしい。

www.carsensor.net

安全のために,このような機能がついた車を買うべきだろう。