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モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

モノシリンがあらゆる「仕組み」を3分でまとめていきます。

作者の連絡先⇒ monoshirin@gmail.com

正社員の基本給が全然上がってないんですけど

春闘で3年連続2%の賃上達成などというニュースを見ると,非正規はともかく,正社員の基本給は上がっているようだ,という印象を受けるかもしれない。

 

しかし,下記連合の発表を見ると,直近(平成28年)の春闘において,2%の賃上げの対象になった労働者は2,687,757人である。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2016/press_release/press_release_20160705.pdf?0706

 

この賃上げの対象となったのは全て正社員と思われるが,平成28年4月時点での正社員の総数は3375万人である(総務省統計局労働力調査

http://www.stat.go.jp/data/roudou/rireki/tsuki/pdf/201604.pdf

 

そうすると,2%の賃上げ対象となった正社員の割合は2,687,757÷33750000≒8%ということになる。

わずか8%。この比率は毎年大体同じくらいだろう。では,全体はどうなっているのか。

下記のグラフは,平成15年から平成27年までの正社員の基本給(月額)の推移を示すものである。(※平成28年の暦年データはまだないので平成27年まで)

なお,平成22年=100である。

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毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査) 結果の概要|厚生労働省

 

実に安定した水平飛行である。安倍政権前の平成24年(99.7)と比べると,平成27年(100)は0.3ポイントしか上がっていない。

正社員の基本給月額はだいたい30万円なので,月額約900円しか上がっていないことになる。

ちなみに,連合の発表によると,平成25年~平成27年までの各年の春闘における賃上げ率は,1.71, 2.07, 2.20となっている。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2016/press_release/press_release_20160705.pdf?0706

春闘で一部の正社員の基本給は上がっているのかもしれないが,全体として見ると大して上がっていないことが上記のグラフから分かる。

 

上記はあくまで名目の指数である。重要なのは実質賃金指数。

実質賃金指数は,名目賃金指数を消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く)で割って算出する。

実質所定内給与の推移が下記のグラフである。

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毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査) 結果の概要|厚生労働省

 

見ての通り悲惨な結果となっている。平成24年(100)と比較すると,平成27年(95.6)は,4.4ポイントも下がっている。

 

こんなに下がったのは,このブログで何度も指摘しているとおり,物価が急激に上がり過ぎたからである。安倍政権になってから3年間で4.9ポイントも上がった。

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統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103

 

これを言うと必ず「全部増税のせい」と言い出す輩がいる。

しかし,下記日銀の試算によると,3%の増税による物価上昇は2%である。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf

 

そうすると,4.9ポイントのうち。2.9ポイントは増税以外が原因となっていると言うべきである。そしてその原因は異次元の金融緩和で円安が急激に進んだこと以外に考えられない。

つまり,物価が上がった最も大きな要因はアベノミクスということである。アベノミクス(の第一の矢)は前年比2%で物価を上げていくことを目標とする政策なのだから,当然といえば当然である。

 

増税も,円安も,「物価が上がる」という効果の面では全く同じである。当然,実質賃金に与えるダメージも同じである。

 

私はアベノミクス信者が「増税による物価上昇はダメだけど円安による物価上昇はアリ」と主張しているように見えるのだが,果たしてそれは妥当だろうか。

どちらも実質賃金が下がるという効果をもたらし,ひいては消費を冷え込ませる。それは下記のグラフが証明している。GDPの6割を占める実質民間最終消費支出は,リーマンショック以来の「3年前より下がる」という異常現象を記録した。増税だけではこんなことにはならない。

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上記は暦年データだが,年度データだともっとひどい。2014・2015年度と実質民間最終消費支出が2年度連続で下がっているが,これはおそらく戦後初の現象なのである。増税に円安をプラスするとこんな悲劇が起きるのである。

f:id:monoshirin:20160702165106j:plain

 

 

話を元に戻す。

基本給だけではなく,ボーナスも残業代もひっくるめた賃金総額の推移を示すのが下記のグラフである。

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ボーナスも残業代もひっくるめた数字でいうと,平成24年(99.8)と比べ,平成27年(101.5)は1.7ポイント増えている。

なお,増えた賃金の内訳を賃金の実数原票から拾ってみると下記のとおりである。この数字はボーナスも残業代も全てひっくるめた賃金の月額平均である。

(※実数原票の数字を指数化すると,毎月勤労統計調査で公表されている賃金指数と微妙に一致しない。この理由は不明である)

 平成24年平成27年差額
所定内給与303,864304,365501
残業代25,09326,6921,599
特別に支払われた給与72,73777,3764,639
401,694408,4336,739


最新結果一覧 政府統計の総合窓口 GL08020101

 

特別に支払われた給与というのは主にボーナスを意味していると思われるが,それが増加分の約7割を占めている。

 

しかし,問題はやはり実質である。

正社員のみの実質賃金の推移を示したのが下記のグラフである。

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ご覧のとおり,平成24年(100.1)と比べると,平成27年(97.0)は3.1ポイント落ちている。リーマンショックの翌年(平成21年)の98.2より下回っている。

 

「非正規が増えたから平均値が下がる。だから実質賃金が落ちた」という主張はアベノミクス支持者からまことしやかに出されるものだが,それがまっ赤なウソであることがよく分かる。正社員だけでもこれだけ実質賃金が下がっているからである。

 

今年も官製春闘という言葉が聞こえてきているが,今までの経過を見ると大して給料は変わらないだろう。前述のとおり,春闘で賃上げアップを達成している正社員は全体の8%程度しかいないのだから。

そもそも日本の労働組合の組織率は非常に低い。下記厚労省の調査によれば,平成27年6月30日現在,民営企業の組織率は16.3%に過ぎない。しかも,そのうち64.9%は,従業員が1000人以上の会社である。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/15/dl/gaikyou.pdf

上記資料から表を抜粋する。

f:id:monoshirin:20161219210456j:plain

 

つまり,日本の労働組合はただでさえ組織率が低い上に,規模の大きい企業にそれが集中しているのである。

これでは企業が儲かっても,賃金は中々上がらないだろう。労働組合が無い企業がほとんどであり,それは労働者からの賃上げ圧力が無いことを意味するのだから。

 

トランプ効果によってまた円安が進んでいるので,一時期落ちていた物価はまた上がるだろう。他方で賃金の上昇は期待できない。我々一般庶民にとってはまた苦しい季節が到来しそうである。

 

ではどうやったら給料が上がるのか。それは是非政治家の皆さんに考えていただきたい。少なくとも,「賃上げしろ」と言っているだけでは大して上がらないことは統計データが示している。

 

私の意見としては,不払いが横行しまくっている残業代をちゃんと払わせるようにすれば,けっこう給料が上がるのではないかと思う。