モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

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日本の株価をつり上げているもの

去年1年間の海外投資家による日本国内市場での株式売越額はリーマンショック時に匹敵する額だったとNHKが報じた。

元のNHKの記事はもうリンク切れになっているので,当時のNHKの記事を引用している下記のブログからNHKの記事引用部分を転載する。

【悲報】日本株、リーマンショックレベルで売られて日銀が買い支えていた | ニュースにひとこと!!

海外の投資家が去年1年間に国内の主な株式市場で株式を売った額は、買った額を3兆6000億円余り上回り、世界的な金融危機リーマンショック」が起きた平成20年に匹敵する規模だったことがわかりました
東京証券取引所のまとめによりますと、海外の投資家が去年、国内の主な株式市場で株式を売った額は、買った額を3兆6887億円上回る、大幅な「売り越し」となりました。これは世界的な金融危機リーマンショック」の影響で、海外投資家の売り越し額が3兆7085億円に膨らんだ平成20年に匹敵する規模です
去年、円高が進んだことや中国経済の減速などで日本企業の業績に対する懸念が広がり、海外の投資家が株式を売る動きを強めたことが主な要因です。
その一方で、日銀は金融緩和策の一環として、複数の企業の株式を組み合わせた金融商品である「ETF」を去年、4兆6016億円買い入れました。

本当だろうか。私は自分で調べて見た。

下記のグラフは国内の主な株式市場における投資部門別買い越し金額の推移を示すものである。

ピンク色になっているのは,買い越しがマイナス,つまり売り越し超過になっている部分。

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データ引用元:投資部門別売買状況 | 日本取引所グループ

 

このグラフを見ると,2013年の海外投資家による買い越し金額が異常に突出している。他の部門は全て売り越し超過である。

2013年の株価上昇は海外投資家がもたらしたものと言って良いだろう。

 

だが,海外投資家の買い越し金額が突出していたのは2013年のみで,後は急落し,2015年と2016年は2年連続で売り越し超過である。

 

そして,確かに2016年の売り越し超過額は約3.6兆円であり,売り越し超過額が約3.7兆円だったリーマンショック時(2008年)と遜色無い金額である。

 

また,直近2年間において,買い越し超過になっているのは「法人」と「自己株式」のみである。

 

「法人」の中には,当然,日銀マネーとGPIF(年金)が含まれている。

ここで,日銀のETF購入額の推移を見てみる。

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データ引用元:指数連動型上場投資信託受益権(ETF)および不動産投資法人投資口(J-REIT)の買入結果

凄い購入額である。2016年の「法人」買い越し額は約4.7兆円だが,そのうちの約4.6兆円を日銀マネーが占めていることになる。

では,GPIFはどうか。GPIFは日銀と違って株式の購入額を公表していない。したがって,株にいくら金を投入しているのか正確な額を把握することはできない。

 

ここで,赤旗平成29年1月28日付の記事には下記の表がある。記事からそのまま引用する。

年金と日銀 株に19兆円/本紙試算 公的資金で つり上げ

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GPIFの株式購入額をどうやって推計したのか不明であるが,2014年以降,合計で8兆円を越える金額を株式購入に充てていることが分かる。

推計の過程が不明である以上この数字を鵜呑みにするわけにはいかないが,GPIFが株式購入に巨費を投じているという点は誰も異論はないだろう。

したがって,「法人」の買い越し超過は,日銀とGPIFの影響が大きいと言って良いと思われる。

さらに,日銀とGPIFの購入額を単純に「法人」の買越額から引くと,マイナス,つまり売り越し超過になると言うべきだろう。

 

ここで,日銀ETF購入の影響について興味深い分析をしているみずほ総合研究所の報告書がある。

https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/mk150423.pdf

上記の報告書から下記の文を引用する。

2014年11月から2015年3月までに日銀がETFの買入れを実施した営業日数は33営業日に上るが、2営業日を除き、日経平均株価前場終値が前日の終値を下回っている日に購入されている日経平均株価前場終値が前日終値を下回った営業日を集計すると、7割以上の営業日で日銀はETFを買い入れている。さらに、そのうち約6割で後場にかけて日経平均株価は持ち直しており市場の期待も加わって、日銀のETF購入が日本株の下落局面で下値を支えていることがうかがえる。

要するに,株価が下がった場合に日銀がすかさず介入しているようである。そして,介入した場合は約6割の確率で株価が持ち直しているようである。

持ち直さなかった場合も,下落幅を小幅に抑える効果はあるだろう。

こうやって日銀が下支えすることにより,株価が大きく下落することを防いでいると思われる。GPIFも同じような金の使い方をしているかもしれない。

海外投資家によるリーマンショック級の売り越し超過があっても大きく株価が下がらないのはこれが大きな要因であると思われる。

 

こういうことを言うと,「日銀やGPIFのお金はそれ自体は巨額だが市場全体の金額からするとその割合はたいしたことは無い,だから影響は大したことない。」という反論がありそうである。

しかし,上記みずほ総研の報告にもあるとおり,現に下支え効果があるのである。

株への公的資金の投入は,投資家達の期待とあいまって,投入した金額以上の株価上昇効果をもたらしているのだろう。

上記みずほ総研の報告書にも「市場の期待も加わって」という記載がある。

公的資金が買い支えるから今のうちに買っておこう」と株を購入する投資家はたくさんいるだろう。

さらに,投入された公的資金は,投資家の懐に入り,それが株への再投資に回されるだろう。

公的資金が呼び水となり,日本の株式市場へたくさんの金が投入されるということである。乗数効果のようなものだ。

公的資金投入による株価上昇効果はいったいどれくらいあるのだろうか。

ここらへんを専門家が研究したらかなり面白いと思うのだが。

 

ところで,もう一つ,直近2年で売り越し超過になっていない投資部門がある。

「自己株式」である。

アベノミクスがもたらした円安によって,主として輸出企業が大きく儲かり,内部留保が増加した。

その増加した内部留保の一部は,自己株式の取得に向かっているようである。

 

直近の株価の上昇はトランプの影響だが,それ以前は公的資金内部留保による自社株買いが大きく影響して日本の株価が高値を維持していると思われる。

 

さて・・・自社株買いはさておき,公的資金の注入はいつまで続けるのだろうか。

これを終了したら株価が大暴落するのは目に見えている。

 

金融緩和の最大の問題点は出口が見えないことだ。

莫大な公的資金の注入を永遠に続けることはできないということには,いくらリフレ派でも異論は無いだろう。

いつか緩和を終える時がくる。

 

その時,何が起きるのだろうか。