モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

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過労死事件を起こした企業への罰則を新しく作るべきじゃないか

電通がまたもや過労死事件を起こし,労基署の立ち入り検査まで受ける事態になっている。

 

ところで,これで電通の超長時間労働体質は変わるのだろうか。

今回の立ち入り検査などを受けて電通が受けそうな罰としては残業代の不払いが思いつく。

残業代の不払いに対する罰は労働基準法によると「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」である。

懲役刑は運用上ほぼあり得ないので事実上は罰金しかない。

たったの30万円。。

ただ,これは渡辺弁護士の記事によると,適用次第では非常に重くなるらしい。説明部分を引用する。

―ついに電通に立ち入り調査―人はなぜ過労で死ぬのか(渡辺輝人) - 個人 - Yahoo!ニュース

例えば「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」が定められている違法残業については「労働者一人」「一日あたり」「一件の犯罪」が成立し、すべてが「併合罪」の関係になります。10人の労働者に10回の違法残業をさせれば、100回の犯罪が成立するのです。その場合、刑法45条以下の条文により、懲役刑の上限は9ヶ月となり、または、罰金の上限は30万円×100=3000万円になります。経営者の個人責任のみならず、企業そのものも責任追及されます(両罰規定)。労働基準法は本当は恐ろしい法律なのです。実際の運用が甘いのは、労働基準監督官の絶対数の不足(これは元々足りないのと、あまり根拠のない公務員バッシングの「成果」でもあります)、検察庁がこの種の事件にやる気を出さないことなど、様々な要因によるものです。

しかし,これはあくまで残業代不払いに対する罰則なので,「過労死事件を起こしたこと」そのものに対する罰則は現行法上存在しない。

海外にもおそらくないだろう。過労死はそのまま「karousi」として海外でも通用するぐらいであり,日本特有の現象だからである。

 

人の命を奪っておきながらそれを直接罰する規定が無い。

それでいいのだろうか。

「過労死事件を起こしたら会社が潰れるくらいの事態になる」と経営者に思わせないと,過労死事件は無くならないんじゃなかろうか。

前にも書いたが,過労死事件を起こしておきながら,今度は労働時間の立証ができないようタイムカードを廃止し,のうのうと長時間労働をさせ続けている企業だってあるのである。

 

そこで,過労死事件を起こした企業に対する罰則を思いつくままに挙げてみる。

公契約の締結禁止

これは嶋崎弁護士が指摘していることだが,要するに過労死事件を起こした会社は,国や地方公共団体等と契約できなくさせるということである。

これは経営に大きなダメージを与えるだろう。

電通過労自死事件~労基署の立件より有効な秘策、それは公契約法・公契約条例~(嶋崎量) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

取締役への就任禁止

過労死事件を起こした際の取締役(もちろん代表取締役も含む)は,以後いかなる会社の取締役になる資格を失う。

当該会社はもちろん,別の会社の取締役に就任することもできなくさせる。

 

ただ,創業社長が仕切っている会社だと,表に出てこないだけで裏で支配するだけになるかもしれないが。

 

法人税10%アップ

これは経済的に大ダメージだと思う。ただ,赤字企業相手だと効果が無い。

 

厚労省サイトへの永久表示

厚労省に「過労死事件発生企業一覧」とでも銘打って,永久に企業名を表示する。

失われた命は永遠に戻ってこないのだから,これぐらいしても良いだろう。

電通のような有名企業ならニュースでみんな知っているかもしれないが,過労死が発生するような企業は有名企業ばかりではない。

これによって新たな犠牲者の発生を防ぐことにもつながる。

 

求人票への明示

趣旨は上記と一緒。サイトを見ない人もいるかもしれないので求人票にも明示させることを義務づける。

 

罰金10億円

私が知る限り,法人に対する罰金刑で一番重いのは金融商品取引法の7億円である(207条)。

金融商品取引法

人の命を奪うわけだからこれより高くても良いだろう。というわけで10億円。

ただ,これは大企業相手だとあんまりダメージが大きくないかもしれない。

なお,個人に対する罰金刑で一番高いのは著作権等にある罰金1000万円。

過労死事件について,経営者等の個人に対する罰金刑を設けるなら少なくともこれを上回る水準にすべきだろう。

 

実現可能性はさておき,思いつくままに色々考えてみた。以上は刑事罰だが,民事でもアメリカのような懲罰的損害賠償の導入をした方が良いかもしれない。

 

なお,過労死だけではなく,過労うつを発生させた企業への罰則もあった方が良いと思う。過労うつはその後の人生を大きく左右するものであり,いわば人生を殺されるような結果になりかねないからである。

 

 

明らかな不正義に対し,それを直接的に罰する法律が存在しないのはおかしい。これでは再発を防ぐことができないと思う。