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モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

モノシリンがあらゆる「仕組み」を3分でまとめていきます。

作者の連絡先⇒ monoshirin@gmail.com

この国は本当にブラック企業に優しい国だ。もはや愛が止まらないらしい。

ブラック企業は残業代を払わない。そして長時間労働をさせる。時に過労死に追いやるほどに。

 

1.超軽い罰則

きちんと残業代を払う企業なら,長時間労働などさせることはできないだろう。コストがかかり過ぎるからである。

残業代を払わないからこそ長時間労働をさせることが可能になる。

ところで,残業代不払いに対する罰則は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金である(労働基準法119条)。

運用上はまず懲役刑になることは無いので,事実上,30万円の罰金が上限。

 

ぬるいと思わないか。

過労死につながりかねない違法行為がたったの30万円。

 

いかにこれが安いか,他の法律と比べると際立つ。

 

例えば,著作権法

著作権侵害に対する罰則は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金。

これは個人に対するもので,法人に対する罰金は最高で3億円である。

 

次に,特許法

特許権侵害をした者には10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金。

法人に対しては最高で3億円の罰金。

 

最後に,金融商品取引法

例えば,有価証券報告書の重要事項に虚偽の記載のあるものを提出した場合は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金。

法人に対しては最高で7億円の罰金である。

 

 

残業代不払いに対する罰則が他と比較していかに軽いかお分かりいただけただろうか。

たったの30万円では違反してくださいと言っているようなものである。

人の命にかかわる違法行為だというのに。

 

2.労働時間の記録が法律で義務付けられていない

労働基準法には,使用者に対し,労働者の労働時間を記録するよう義務付ける条文が存在しない。

だから,ブラック企業は労働時間の証拠を残さないようにする。

これは以前人から聞いた話だが,過労死事件を起こし,遺族に多額の賠償金を支払ったとある企業が何をしたか。

タイムカードを廃止したのである。

タイムカードが長時間労働の証拠となり,過労死が認められてしまったからである。

「過労死の再発」を防ごうとしたのではない。「過労死と認定されてしまうことの再発」を防ごうとしたのである。そして変わらず長時間労働をさせ続けているそうである。

人の命など,何とも思っていない。

だが,このタイムカード廃止が違法にならない国が日本。

そして,こんな会社で労働者側が自分で労働時間を記録していなかった場合どうなるか。

多くの場合,泣き寝入りを強いられるのである。証拠が無いから。

 

罰則が軽い上に,使用者側が証拠を残さない場合もあるため立証も難しい。ついでに言えば,だいたい是正勧告で済んでしまい,残業代不払いが立件されることは極めて少ない。

「自分の会社はブラック企業かもしれない」と思ったら必ず自分の労働時間を記録しなければならない。メモでも良いし,スマホアプリでもよい。とにかく記録すること。

3.少なすぎる労働基準監督官

さらにさらに,日本は労働基準法違反を取り締まる労働基準監督官の数が圧倒的に足りない。

やや古いが2011年11月に全労働省労働組合が公表している下記の資料から重要部分を引用する。

http://www.zenrodo.com/teigen_kenkai/img/rodougyouseinogenjou.pdf

 

また、労働条件の最低基準を確保する役割を持つ労働基準監督署について見てみると、全国に配置される労働基準監督官は約 2,941 人(※本省 23 人、労働局 444 人、労働基準監督署 2,474 人(実際に臨検監督を行う監督官は、管理職を除くため 2,000 名以下となる)であり、全国に 1 人でも労働者を使用する事業は約 409 万事業場(※「平成 18 年事業場・企業統計調査」より)の臨検監督を実施する場合、監督官1人あたりにすると1,600件以上で、平均的な年間監督数で換算すると、すべての事業場に監督に入るのに 25~30 年程度必要な計算となります(※平成 22 年度は 174,533事業場を監督し、監督実施率は 4.3%)。 雇用者 1 万人当たりの監督官数で比較すると、日本は0.53 人となり、アメリカを除く主要先進国と比して 1.2 倍~3.5 倍の差があります(【表2】)。平成20 年度に実施した監督の労働基準法等の違反率は 68.5%(【表3】)であり、3 分の 2 以上の事業場で法律違反があることから、日本においては労働者の労働条件が十分確保されているとはいえない状況です

 

罰則が軽い上に,取り締まる側の人の数が圧倒的に足りない。

平成22年度の監督実施率4.3%って・・・ほぼ野放しじゃないか。

これは2011年に公表された資料だが,きっと今だってそんなに変わらない状況だろう。

 

まあ,なんてブラック企業に優しい国なんでしょう。

 

4.裁量労働制

裁量労働制というのは,労働者に出退勤時間等についての裁量を認める代わりに,一定時間働いたものと「みなす」制度である。

企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制があり,一定の要件を満たすと適用可能になる。

例えば9時間のみなし労働の場合,12時間働いたとしても9時間しか働いていないものとみなされる。

裁量なんて全然無いのに。

合法的(少なくとも形の上では)に残業代をカットしたいだけ。これは過労死の温床となっている。

 

なお,同じく労働時間の「みなし」が適用されるものとして事業場外労働がある。

要するに外回りの営業マン等,会社の外で働く人の場合,どれくらい働いているか分からないので,一定時間働いたものとみなす,というものである。

しかし,携帯端末が普及した今,営業マンがどこで何しているかなんて簡単に把握できる。だからこの制度が適用される余地なんて携帯電話すら持たせていない場合ぐらいしか思いつかない。しかし,この制度を悪用して残業代をカットしている企業は多いだろう。

 

合法的に残業代をカットできる制度まで用意するなんて,なんてブラック企業に優しいんでしょう。

5.求人詐欺野放し

この国がブラック企業に優しい点はまだある。求人詐欺が野放しになっている。

詳しくは下記のサイトに書いてある。

ブラック企業被害対策弁護団

 

要するに嘘の求人情報を書いて求職者を騙すのである。

一番ポピュラーなのは固定残業代。例えば基本給20万円と書いてあった企業に応募し,入社してみたら「20万円には残業代も含まれています」とか言われて一切残業代が払われない,というようなケースである。

こんなあからさまな詐欺が野放しになっている国。日本。

こんなんじゃ給料が上がらないはずだよ。

ブラック企業問題は経済問題としても捉えないとダメだよ。使い捨てられるわ給料ごまかされるわでどんどん経済に悪影響及ぼすぞ。いや,もう及ぼしてるか。

 

6.とどめの残業代ゼロ法案

しかし,こんなただでさえブラック企業に優しい国日本がもっとブラック企業に優しくなろうとしている。

残業代ゼロ法案を成立させようとしているからである。

詳しくは下記のサイトでどうぞ。

ブラック企業被害対策弁護団

 

「時間ではなく成果で評価する制度」とか言われているが本当に真っ赤な嘘である。

大本営発表を垂れ流し続けるマスコミは自分で法案の条文を見たことがあるのか。

成果給を義務付ける条文などどこにもない。

 

この法案は単に残業代をゼロにするものである。ブラック企業の残業代不払いを合法にするものである。

与党が圧倒的に強い今,審議入りされたらほぼ確実に通ってしまう悪魔の法案。

長時間労働のブレーキが消えてしまう。ホワイトな企業までブラックになりかねない。

 

この国はもっともっとブラック企業に優しくなりたいんだな。

ブラック企業が愛しくて愛しくて仕方がないらしい。

 

ちなみに,反対ばかりでいつも対案を出さない等と批判されている野党側はきちんと対案を出している。下記サイトを参照。

ブラック企業被害対策弁護団

 

この野党側の対案で提示されていることに加えて,私が是非実現してほしいと思っているものは下記のとおり。

 

(1)残業代不払いの厳罰化

罰金1億円ぐらいでもいいと思っている。今のままでは「残業代払わない方がお得」と思われているように感じる。

残業代を払いたくないなら残業をさせなければいい。残業をさせないようにするにはどうしたらいいのか,それを考えるのが経営者の仕事。

そして,残業ゼロできちんと会社を維持できるのが優秀な経営者。

 

(2)残業代不払を公表された企業は,求人票にそれを明記することを義務付ける。

こうすればブラック企業は人を集めることができなくなって次第に淘汰されていくだろう。明示期間は3年ぐらいでいいんじゃないか。

犠牲者を増やさないためにもこれは重要だと思う。

 

(3)労働基準監督官の大幅増員

前述したとおり,労働基準監督官の数が足りなすぎる。圧倒的に増員してほしい。これは人の命にかかわることなのでお金を惜しまないでほしい。

 

ブラック企業が無くならない原因はこの国がブラック企業に優しすぎるからです。