モノシリンの3分でまとめるモノシリ話

モノシリンがあらゆる「仕組み」を3分でまとめていきます。

作者の連絡先⇒ monoshirin@gmail.com

GDP改定で「経済成長」と「財政再建」する日本

2025年12月8日、改定GDPが公表された。

 

統計表(四半期別GDP速報)2025年 : 経済社会総合研究所 - 内閣府

 

ここ10年でGDPは3回改定されている。

その名目GDPを全部並べたものが下記のグラフ。

 

(※なお、基準名と改定年が一致するわけではない点に注意。例えば、平成23年基準への改定が行われたのは平成28年である。)

 

改定を経るごとにどんどんかさ上げされていることが分かるだろう。

例えば2015年度の数値で見ると、この中で一番古い平成17年基準の時は500.6兆円だったものが、最新の令和2年基準では551.9兆円。51.3兆円も違う。率にして10%以上のかさ上げである。

 

安倍氏は総理大臣時代に「名目GDP600兆円」を目標に掲げていたが、それは平成17年基準の際の目標値である。

上記のとおり、最新の令和2年基準が平成17年基準より10%程度かさ上げされていることを考慮すると、平成17年基準のままだったら未だに600兆円には到達していないだろう。

 

なお、平成17年基準から平成23年基準への改定の際に私が「ソノタノミクス」と名付けた異常なかさ上げが行われたことについては下記の記事を読んでいただきたい。

blog.monoshirin.com

 

ここで、最新の令和2年基準とその直前の平成27年基準を比較し、かさ上げ額とかさ上げ率を示したものが下記のグラフである。

 

近い年度の数字ほどかさ上げ額・率が異常に高くなる「右肩上がり」となっている。

直近2024年度が26.9兆円の、4.4%のかさ上げとなっており、最も高い。

 

なお、2024年度の消費税収は史上最高の25兆円である。したがって、このかさ上げ額26.9兆円は史上最高の消費税収よりも高いことになる。この金額の凄まじさがよく分かるだろう。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/010.pdf

 

GDPの各項目のうち、どれが大きくかさ上げされているのか。

ここで、2024年度の数値について、各項目ごとに令和2年基準と平成27年基準を比較し、金額の大きな順に並べ変えたものが下記表である。

視覚的に分かりやすいよう、上記表の「差」をグラフ化したものが下記である。


「民間企業設備」のかさ上げ額が圧倒的である。

ついで「民間最終消費支出」「民間住宅」「政府最終消費支出」の順になっている。これが主な要因となっており、他はあまり大きな差が無い。

 

では、上記4つの数値について、各年度のかさ上げ額と率の推移を見てみよう。

まずは「民間企業設備」から。

2018年度以降、かさ上げ率が全部10%を超えており、凄まじい。これも近い年度ほどかさ上げ額・率が大きい。

 

次に民間最終消費支出。

2013年度まではかさ上げではなく、かさ「下げ」されている。異様である。

2014年度プラスに転じ、2021年度から急に金額と率が大きくなっている。まるでコロナによる消費停滞を埋め合わせるかのようである。

これも近い年度ほどかさ上げ額・率が大きい。

 

次に民間住宅。

これも近い年度ほどかさ上げ額・率が大きい。

特に2023年度と2024年度はかさ上げ率が20%を超えている。

 

最後に政府最終消費支出を見てみよう。

2020年度までは途中マイナスになる年度も混じっており、プラスの年度も最大で0.1%のかさ上げ率でしかない。しかし、2021年度、2022年度と0.3%が続き、2023年は1%、2024年度は一気に2%のかさ上げ額となった。

 

これも近い年度ほどかさ上げ額・率が大きい。

 

このように、合計額で見ても、内訳で個別に見ても、いずれも近い年度ほどかさ上げ額・率が大きい「右肩上がり」のグラフになっていることがよく分かるだろう。

 

同じ基準で改定しているのだから、こんな右肩上がりになるのは極めて不自然である。本来であれば、フラットに近いグラフになるはずである。

 

比較対象として、平成23年基準と平成27年基準の差額と率を見てみよう。なお、視覚的に分かりやすいよう、左右の目盛りは令和2年基準と平成27年基準を比較した際のものと同じにしてある。



このように、全然右肩上がりになっていない。むしろ古い年度の方がわずかにかさ上げ額・率が高くなっている。しかし、その差も少ない。

かさ上げ額最小は2019年度の4.3兆円、最大は1996年度の9.8兆円、その差は5.5兆円。

かさ上げ率最小は同じく2019年度の0.8%、最大は1996年度の1.9%。その差は1.1%である。

 

同じ基準で改定したのだから、差が生じてもこの程度に収まるはずなのである。

 

他方、令和2年基準と平成27年基準は全然違う。もう一度見てみよう。

かさ上げ額最小は2009年度の3.5兆円。最大は2024年度の26.9兆円。その差は23.4兆円もある

かさ上げ率最小はこちらも2009年度の0.7%、最大は2024年度の4.4%、その差は3.7%

明らかにおかしいことがよく分かるだろう。

 

 

 

なお、これと同じような現象が生じたのが、平成17年基準から平成23年基準への改定であった。

下記のとおりである。

かさ上げ額最小は1994年度の7.1兆円、最大は2015年度の32.2兆円、その差は25.1兆円。

かさ上げ率最小は同じく1994年度の1.4%、最大は2015年度の6.4%。その差は5%である。

 

このように、異様な右肩上がりであった。この際、「ソノタノミクス」現象が発生したことについては下記の記事を読んでいただきたい。

 

blog.monoshirin.com

 

直近10年の3回のGDP改定をまとめると下記のとおりである。

 

1 平成17年基準から平成23年基準への改定(公表日2016年12月8日)

  →「超右肩上がり」

2 平成23年基準から平成27年基準への改定(公表日2020年12月8日)

  →特に変な点無し。

3 平成27年基準から令和2年基準への改定(公表日2025年12月8日)

  →「超右肩上がり」

 

なお、1の改定時の総理が「アベノミクス」の安倍氏、2の改定時の総理がそのアベノミクスを継承する「サナエノミクス」の高市氏である。

 

ここで、一国の財政の健全性を測る指標として重視されるのが、一般政府の総債務残高対GDP比である。一般政府には、国に加え地方も含まれる。

 

IMFによると、2024年の日本の一般政府総債務残高は約1442兆円である。

www.imf.org

 

これを前提に、2024年度の名目GDPで一般政府総債務残高対GDP比を算出してみると、

・改定前の平成27年基準では約234%

・改定後の令和2年基準では約225%

となる。

 

つまり、改定によって約10%も改善されたことになるのだ。

これが日本の「財政再建」である。

 

GDP算出について国から独立して検証する公的な専門機関は存在しない。したがって、この改定の妥当性を厳密に検証するのは不可能だろう。しかし、結果を見れば極めて不自然である。

 

倒産間際の会社は粉飾決算をする。日本も同じように見える。