
拙著「サナエノミクスによろしく」が6月5日に発売された。
現在日本は円安と金利上昇で大変な事態になっているが、なんでこうなっているのか、今後どうなるのか、よく分からない方が大半だと思う。この本を読めば理解できる。知識ゼロの方でも分かるように非常に基本的なところから書いている。
前作「アベノミクスによろしく」を読んだ方にとっては、答え合わせになるだろう。
以下、佐藤秀峰先生の「ブラックジャックによろしく」を使った扉絵と共にダイジェストで紹介する。
なお、「ブラックジャックによろしく」は利用規約に従って二次利用が可能であり、色々なところで活用されている。私は何度もお世話になっている。
第1章 総裁就任から3か月も経過しない間に生じた市場の激烈な反応

ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰
高市氏総裁選勝利前日の10月3日時点は1ドル147円台だったが、10月4日に勝利が確定すると円安が急進し、11月20日には157円台を記録した。2カ月も経過しない間に円がドルに対して約10円も安くなったのである。
もう国民の記憶の彼方にあるかもしれないが、つい最近の出来事だ。
改めて冷静に考えてみると、たったの約2カ月で10円も円安が進行するなんて異常である。
これが「サナエノミクス」つまり積極財政に対する市場の警告であった。
積極財政とは、極めて簡単に言えばお金をばらまくことである。
お金は、ばらまけば価値が下がる。
ただでさえ円安のところへ「さらに円の価値を下げます」と言っているのが積極財政である。
価値の下がる通貨を持っていれば損をする。
為替市場が円売りに走ったのは当然であった。
第2章 通貨の仕組みを理解しよう

ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰
この章では、お金の仕組みを基本から説明している。これが分かると、サナエノミクス及びその前身であるアベノミクスを理解できる。
お金は作ろうと思えば無限に作り出せるが、作り過ぎると価値が下がる。つまりインフレになる。
そうならないように、中央銀行が金利を上げ下げしてお金の量を調整している。
その調整機能を破壊したのがアベノミクスであり、そこに乗っかるのがサナエノミクス。
第3章 アベノミクス

ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰
アベノミクスは、インフレ(物価の継続的上昇)を引き起こすため、「異次元の金融緩和」によって円の量を増やし、その価値を意図的に下げた。
その結果、賃金が物価上昇に追いつかず、戦後最悪の消費停滞、エンゲル係数急上昇、実質実効為替レートが1970年を下回る、等の数々の異常現象が発生した。
統計を見れば、ただ国民は貧しくなっただけであった。
円安が大きく影響して国民が貧しくなった、という点は前作「アベノミクスによろしく」でも指摘した。
現在は状況がさらに悪化している。
その失敗を糊塗するため、異常な統計操作がされた。
特にGDPについては、実態から大きく乖離していると見た方がよい。
「アベノミクスによろしく」では2016年12月のGDP改定を取り上げたが、その後2回GDPは改定され、そのたびにかさ上げされている。特に2025年12月の改定は、2016年12月の改定と同じ「超右肩上がり現象」が発生している。
第4章 日本の債務膨張の軌跡

ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰
アベノミクス第1の矢「異次元の金融緩和」つまり国債爆買いは、日本財政を延命させる効果をもたらした。これがアベノミクスの真の効果と言っても過言ではない。
その前提として、日本の債務がどのように膨張していったのかを理解する必要がある。これが分かると、アベノミクスが単なる経済政策ではなく、日本が選んだ「現実逃避の道」の最終章であったことが理解できる。
「将来世代への先送り」という言葉をよく目にするが、それは誤りである。
もう、先送りされた負担が「円安によるインフレ」という形で顕在化している。
今、負担を先送りしても、そのツケは近未来の我々自身が「円安インフレのさらなる悪化」という形で払わされることになる。
増税から逃げ続けると、やがて「インフレ税」という制御不能の悪魔が襲ってくる。そして帳尻合わせが行われる。我々はそれを身をもって体験し始めている。
「円安ホクホク」とか言ってしまう高市総理は全くこの状況を理解していないし、理解するつもりもないし、理解する能力も無い。
第5章 金利が上がると起きること

ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰
日本の金利は他国と比較するとまだまだ異常に低い水準にある。
日銀に対して「もっと金利を上げろ」という専門家の声も多い。
なぜ、上げないのか。この章を読めば分かる。
上げてもアウト、上げなくてもアウト。それが今の日本の状況である。
だから「アベノミクスに出口は無い」とずーっと言われ続けてきたのだ。
出口は無いが、崖はある。
崖に向かって全力疾走する政策がサナエノミクスである。
国民の圧倒的支持率がその崖への疾走を後押ししている。
第6章 財政楽観論

ブラックジャックによろしく 佐藤秀峰
「日本は大丈夫」と信じたいがために、いろんな屁理屈が生み出されている。この章ではその屁理屈を全て論破している。屁理屈を一覧にすると下記のとおり。
1 日本は資産があるから大丈夫?
2 経常収支黒字だから大丈夫?
3 対外純資産世界一だから大丈夫?
4 自国通貨建て国債で財政破綻(デフォルト)はないから大丈夫?
5 極端なインフレは戦争の時だけだから大丈夫?
6 利払費が増えても日銀から返ってくるから大丈夫?
7 統合政府で見れば国債が消えるから大丈夫?
細かく考えなくても、扉絵で指摘しているとおり、「その理屈でこの円安が止まるんですか?」という根本的な疑問がある。もちろん、止まらない。これらの屁理屈は急進する円安を食い止めるために何の役にも立ってないし、これからも役立つことは無い。
まとめ
読み終わった後に各章の扉絵を見返すと、「扉絵に全てが要約されている」ことがよく分かるだろう。
私は今まで書いた本の中で、一貫して「大崩壊を止める手段は無い」と言い切っている。サナエノミクスは、その大崩壊を早める役割を果たす。
ところで、私が原稿を収めた後になって、史上最悪の石油ショックが発生した。これも、大崩壊を早めるものであるが、サナエノミクスよりも影響力は大きい。とてつもないインフレが発生することが確定しているからである。インフレを食い止めるには金利を引き上げるしか無いが、上げたら崩壊するのが今の日本の状況である。
高市総理が徹底的に現実逃避に走っているので、世間の多くの人はまるで石油ショックが無いかのように錯覚しているかもしれないが、容赦の無い現実がすぐ訪れる。
大崩壊の解決策も出せないくせに、なんでこんな本を出すのかと思われるかもしれない。
それは大崩壊を「繰り返さない」ためである。
原因が理解できないとまた繰り返す羽目になる。しかも短期間で。
そうならないためには、誰かが嫌われ役に徹して耳に痛い事実を告げなければならない。その役割がたまたま回ってきたのが私であると思っている。
