【分かりやすくまとめると・・・】
・石油は,生物の遺骸が積み重なって生まれたという説が有力。
・石油埋蔵量と一般に認識されているのは,可採年数のこと。これは現在発見されている石油を採算の合うコストで採掘できる年数。埋蔵量そのものではない。
・石油は沸点の違いを利用して蒸留され,燃料・ビニール・ゴム・繊維等に使われている。
石油がどうやって生まれるのかについては,大きく二つの説がある。
ひとつは,生物の遺骸が積み重なって,それが地熱と圧力で変化し,石油となった,というものだ。
これは生物由来説と呼ばれている。
それ,発生過程が石炭と同じだね。
そうだね。石炭も生物の遺骸が積み重なってできているからね。
両方とも主に炭化水素からできている点も共通しているね。
液体と固体の違いに過ぎないとも言えるね。
そうかもね。さて,もう一つの説は,石油は地球の底から湧き上がってくる,というものだ。
これは無機由来説と呼ばれている。
生物が元になっていないということだな。
この説は,元々地球の奥深くに含まれていた炭化水素が,地球の熱と圧力で変化して石油になった,と主張している。
その説に立つと,石油は地球の底からどんどん湧き出てくることになるね。
そうだな。石油の枯渇を心配しなくてよさそうだね。
ただ,現在は生物由来説が有力だ。
そうすると,いつか石油は無くなりそうだね。あとどれくらいの量があるの?
現在のところ,分かっているだけであと50年以上利用できる量があるようだよ。
それ,僕が小さいときは,あと30年しかもたないとか言っていたような気がするんだけど。
どんどん増えてない?
石油埋蔵量と一般に思われているのは,可採年数のことなんだ。
簡単に言うと,現時点で採掘可能な石油の量を,年間生産量で割った値が,可採年数だ。
つまり,あくまで現時点で見つかっている石油しか対象になっていないということだね。
そうだ。しかも,採掘可能というのは,採算の合うコストで採掘できるという意味だ。
仮に採掘すればするほど赤字になってしまうとしたら,可採年数が0になってしまうということだね。
可採年数が石油の埋蔵量を示しているわけではないんだな。
そうだ。さっき僕が言った50年というのも,あくまで可採年数のことさ。
だけど,いずれ石油が枯渇する日は来るだろうね。
石油は炭化水素化合物をはじめ,色々な物質が含まれている。
その色々混ざった最初の状態の石油を原油という。
それを蒸留することによって,色々な物質に分けている。
蒸留というのは,沸点の違いを利用して,物質を分離させることだ。
沸点が低い物質は,沸点が高い物質よりも早く蒸発する。
そうやって沸点の低い物質からどんどん蒸発させて,分離していくわけだな。
そうだ。蒸留によって石油は天然ガス,ナフサ,ガソリン,灯油,軽油,重油,残油に分離される。
そして,様々な用途に使われる。例えば,ガソリンは車の燃料として使われている。
灯油は純度を高くして飛行機の燃料に,重油は船舶の燃料に使われる。
石油は軽いし場所も取らないから,乗り物の燃料としては最適だね。
特に飛行機は,石炭だと重いから飛ばせないだろうね。
そうだね。それに石油の方が熱効率が良い。
燃やした時に生じるエネルギーが石炭よりも大きいんだ。
石油の使い道は燃料だけじゃないんだよ。
ナフサからは,プラスチック,ビニール,ゴム等が作られる。
さらに,洗剤,塗料,はては洋服も石油から作られている。
え,石油で出来ている洋服なんてあるの?
太郎,君の履いているジャージのタグを見てごらん。
ポリエステル100%て書いてあるよ。
じゃあそれは石油から出来ている洋服だ。
へえ~そうなんだ。なんか不思議だね。石油から服が出来るなんて想像できない。
太郎,糸というのは元をたどれば生物の体から出来ているだろ。
綿糸は綿の植物繊維だし,ウールは羊の毛だ。
そうだね。あ,生物由来説に立てば,石油も生物の体から出来ているわけか。
そのとおりだ。そしてどちらも炭素化合物の塊だ。
そう考えると,石油から色々な製品が出来るのは不思議じゃないな。
石油は生物達の残骸だからね。
現代社会は石油が無くては成り立たない。
でも,石油はいつか枯渇してしまうから,代わりのエネルギーを見つけ出す努力が続けられている。
次は飛行機について話をしよう。石油が使えるようになって初めて,飛行機を飛ばすことができるようになったからね。